BCリーグ分裂の真相。なぜ西地区の4球団は新リーグ発足へと向かったのか (4ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text & photo by Asa Satoshi

 9月13日に行なわれた滋賀のホーム最終戦は、地区優勝を決めたチームの凱旋試合となった。この日の対戦相手である福井との試合前のベンチ裏の様子は対照的だった。

 両軍とも新リーグ移行への方向性を伝えられたのは、9月1日の公式発表の時だった。詳細については選手、スタッフともまだ聞いていないそうだが、福井の福沢卓宏監督は「来シーズン、自分がどうなるのかはまったくわからない」と話す。

 それでもベンチ裏では、この話題でもちきりらしい。そのなかでたびたび名前が挙がるのが、滋賀のオーナー会社である「オセアン」だ。同社がリーグスポンサーになる、あるいはリーグ運営を行なうことになれば、選手の待遇は格段に改善されるのでは......と噂されている。

 地元新聞社の球団経営断念を受けて発足した福井ワイルドラプターズの資本力は十分ではない。リーグ当局が代表の右腕的存在である小松原鉄平氏を出向させて球団を存続させようとしたが、財政状況は相変わらず厳しい。

 今年、BCリーグは選手の兼業を認める代わりに無報酬という「B契約」制度を導入したが、これは全選手に報酬を支払えなくなった福井を救済するための方策だった。こうした延命措置をとったものの、新聞社とともに撤退した地元スポンサーが戻ることは今後も考えにくい。

 そのためオセアンが福井の経営も引き受けるのではないかという期待値を込めた憶測が、待遇改善の根拠となっているようだった。

 ただ、現在の福井の選手がその恩恵を受けるわけではあるまい。今シーズンの成績は西地区最下位の21勝39敗。選手のほとんどは無給のB契約で、彼らは球団が紹介するアルバイトをしながらプレーしていた。

 新リーグは、高待遇で若くて素質のある選手を集める方針ということだが、そうなれば現在福井でプレーする選手はリストラされることも考えられる。

「現役は続けるつもりです。でも、もう西地区はいいかな」

 そう語るのは20代後半に差しかかったベテラン選手だ。来季のことなどどうなるかわからないのが独立リーガーの常とはいえ、やはり心中は穏やかではないようだ。

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