里崎智也が語る「ボビー・バレンタインが最高の監督である理由」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by Kyodo News

――バレンタイン監督は、モチベーターとしても優れていたという印象がありますが、選手たちにはどんな言葉をかけていましたか?

里崎 結果はあまり問わないです。多くの日本人みたいに結果論で言わない。やってほしいこと、方針をしっかりと伝えてきましたし、それをやったうえで結果が出なくても怒られることはありません。そこは明確だったので、やりやすかったです。

「うまくやっとけよ」といった、あやふやなことも言われません。「"うまく"って、何やねん!」って思いますよね。それを具体的に言わない人に限って、結果を出さないと「うまくやっていない」と言う。ボビーはそういうこともなかったですし、技術的なミスで責められることもありませんでした。

――言われて納得がいかなかったことはありますか?

里崎 納得がいかないことは常に話し合っていました。「何でも言いに来てくれ」と言われていたので。ただ、どこの監督でも上司でもだいたいそうだと思うんですけど、新しい人間が入ってきた時に必ず「みんなと一緒にいい組織にしたいから、思うことや意見があったら何でも言ってくれ」って言うじゃないですか。それを鵜呑みにして実際に言いに行くと、「文句あるんか」となることも多いんですよ。

 その点、ボビーの監督室のドアは常に開いていましたし、ドアが閉まっていたら誰かがボビーと話しているという感じでした。いろいろな話を聞いてくれたので、常にそういうコミュニケーションができていましたね。

――"無礼講"という言葉もありますが、そういう感じでもない、ということでしょうか。

里崎 そうですね。自分を格好よく見せたいがために、「何でも言いに来てくれ。責任は俺が取るから」という人間は一番信用できません。そう言いながら責任を取っている人を見たことがありませんから。

 あらためて"責任"などと強調しなくても、上司はもともと責任を取らなければいけない立場です。「責任を取る」という言葉には、「責任は取るから言うことに従え」という意味が含まれていることがある。そういう言葉を頻繁に使う人は、人に責任をなすりつけるのが得意です。ボビーはそういうこともなく、正面から向き合ってくれました。

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