楽天復帰はなぜ今年だったのか。田中将大が吐露した2つの思い (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

 ひとつは、今年で東日本大震災から節目の10年目を迎えることだ。ヤンキースに移籍後も、被災地訪問やチャリティ活動など復興支援を精力的に続ける田中は、楽天入団の決め手にそのことを挙げた。

「やはり、『自分にとって意味のあるタイミングなんじゃないか』と思った。今まで以上に(被災者の)近くにいられることで、また僕にできることがたくさんあるかもしれない。できる限り協力していきたいですし、一緒に頑張っていきたい」

 これが「人間・田中」として出した答えなら、「選手・田中」として楽天を選んだのはなぜか。それはきっと、投手としての矜持だ。

「イーグルスでプレーをして、また日本の方々の前で投げる。そこを上回るものが最後までなかった」

 そのように意思を綴る田中には、じつは2014年に海を渡った当初から秘めていた想いがある。「誤解を招いたり、話題が独り歩きするのも嫌だったから、頑なに答えなかった」と心情を漏らしてから、その言葉を解放した。

「必ず日本に帰ってくる。楽天イーグルスで、キャリアの晩年ではなく『いいタイミングでバリバリと投げたいな』と」

 田中にとって、ベストなタイミングだと判断したのが今だった。だからこそ"大きなオファー"を断ってでも、古巣を新たなキャリアのスタートに決めたわけだ。

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 同時にそれは、楽天ですべてを手に入れた男にとって、さらなる高みへの挑戦でもある。会見で田中が紡いだ言葉のなかで、印象深いものがあった。

「正直、2013年でみなさんの印象が止まっていると思う」

 この年の記録と記憶は、野球ファンであれば誰もが鮮明に呼び起こすことができる。シーズン開幕から24連勝。無敵の絶対エースは楽天を初の日本一へと導き、震災復興を目指す東北の「シンボル」となった。

 いくらヤンキースの主戦投手として実績を積んだ田中といえど、そう易々と越えられる山ではない。それは本人が一番理解している。ただ、見上げる山が高ければ高いほど気力を漲らせるのも、田中という投手である。

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