田中将大が叫んだ「伝説の8球」。楽天を初優勝に導く最高のアウトロー (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

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 完璧に抑え込まれた打者の記憶にそう残るほど、1イニングをミッションに登板した田中は圧巻だった。ホームベース裏にある記者席から見ていると、捕手・嶋基宏の構えたミットに糸を引いたようなボールが次々と吸い込まれていく。うなるような球威と、精密機械のごとく制球力を備えた150キロ超のストレート。とくに栗山と浅村に対する田中の投球はこう語り継がれている。

"伝説の8球"──。

 とりわけ圧倒的だったのが、浅村に投じた最後の1球だ。2ボール2ストライクから外角低めのギリギリに、この日最速の153キロの速球を投げ込んだ。

 浅村は始動がわずかに遅れ、中途半端なスイングで空振り三振に終わった。

 当時、浅村はどんな狙いで打席に臨んでいたのか。打席で対峙した男の声を聞くと、"伝説の8球"の凄みがさらに増して感じられる。

「栗山さんに真っすぐをドン、ドン、ドンだったので、僕に対しても真っすぐで来るなと思いました。それまでにスプリットで印象をつけられていたので、真っすぐ1本とわかっていてもあのストレートでねじ伏せられたという感じがありましたね」

 田中は栗山に対し、外角に150キロ超の速球を3球続けて1度も手を出させずに見逃し三振。ネクストバッターズサークルから見ていた浅村は、自分にも力で押してくるとわかっていた。だが、シーズンを通じて植え付けられたスプリットの残像があるから、わかっていても打てなかった。

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