2020.03.18

ドラゴンズの名手は言った
「勝つためじゃない、かっこいいからです」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


「もう、打ったらバーッと逆方向に走る。だから、それをやり始めたら、夏場はホント、バテましたもん。チェンジでベンチに戻ってくるとき、いつも、はぁ、と息が切れるというね。人の倍、走りましたから。常に全力ですし。

 だけど、それを大洋(現・DeNA)の監督だった別当薫(べっとう かおる)さんが認めてくれた。『あれはすごい』って。だから、認めてくれる方がいて、僕が引退したときに連盟表彰していただけたのはうれしかったねぇ。一塁のカバーを見とってもらえた、ということが」

 バックトスと比べれば、本当に目立たないプレーだ。これは「かっこいい」とは別物だろう。

「外国人で、ショートでバートっていう選手が中日にいましたけど、僕がカバーして、二塁でアウトにしたりすると、いつも褒めてくれました。『ビッグプレーや』って」

 バートの名前が出た。71年に来日し、翌年にゴールデン・グラブ賞を獲った助っ人だ。高木さんにとって〈バートがいちばんウマが合った〉と資料に記されていた。

「ウマが合った、というよりね、うまいから。そりゃあ、相手がうまけりゃ楽ですよ。その点、一枝さんはオーソドックスでね。もちろんうまかったし、非常に理論派の方でした。で、バートはちょっと一見、どんくさそうに見えるんだけど、球際に強い、絶対ボールを逃さない。軽快な、流れるような、というショートじゃないけども、うまかった。

 よく『二遊間コンビは息が合う』とか言うけども、これはもう、個人がうまけりゃ相手のミスはお互いにカバーし合うんでね。カバーし合ってるうちに信頼し、安心して、思い切ったプレーもやれる。そういうことにつながるんです」

 個人のうまさでカバーし合う──。「息が合う」という曖昧な表現よりも遥かに実践的で、高木さんならではの言葉に思えた。相手を信頼しての思い切ったプレーでは、高木さんの場合、一枝修平との間でよく決めていたというグラブトスもある。