日本ハムのオールド育成選手は野球漬けで「幸せ」だけど「嫌になる」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 大渕スカウト部長は樋口について、「キャラクターも体つきも面白いし、実戦でのうまさもある」と評する。

 15日の紅白戦では1安打1四球とさっそく結果を残した。だが、職人肌の樋口は「素直に喜べばいいんでしょうけど、まだまだです」と納得していない。それは横浜高の先輩であり、新潟時代には自主トレの練習パートナーを務めた近藤健介という偉大な存在を目の当たりにしてきたからだ。

「首位打者を争うようなバッターをずっと見てきたので、自分なんかまだまだだとわかりますから」

 名門・横浜高では1年秋から4番を任されるなど、小柄でも強く振り切るスイングが魅力だった。だが、進学した立正大ではレギュラーにもなれなかった。

「ギリギリベンチには入れてもらっていましたけど、単純に打てませんでした」

 BCリーグに入団し、3年目となる昨季に転機が訪れた。「初めてちゃんとウエイトトレーニングに取り組んだ」と肉体改造に成功し、19本塁打をマークした。年齢の壁を破り、育成ドラフト2位指名を勝ち取った。

 独立リーグでいくら結果を残そうとも、実際にNPBから指名を受けるのは20歳前後の素材型ばかり。大卒3年が経過した樋口が指名されたことは、同じような状況で奮闘する選手にとって大きな励みになるはずだ。樋口は「正直言って25歳は野球をあきらめるラインなので、僕がNPBに行ったことで『もう1年チャレンジしてみようかな』と思う選手が出てきたらうれしいですね」と語る。

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