2020.01.17

5連打で0点、3連続三塁打…。
バルボンが覚えていた阪急の珍プレー

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


 英語、スペイン語、母国の言葉で日本の野球、日本の投手の特徴を教えられる存在は助っ人にとって大きい。通訳担当が言葉だけではなく野球も訳せたらベスト、ということだ。

「ある程度、通訳が野球わかってたらやりやすいと思うわ。まあ、あんまり自分でこんなこと言うたくないわ。自慢になっちゃうからな。でも、少しでも野球知ってるだけでだいぶ違うと思うわ」

 謙遜(けんそん)が入るあたりは日本人的な感覚だと思うが、バルボンさんは通訳としては日本プロ野球史上、唯一無二の存在だ。しかも、チーム強化のために通訳以上の役割を果たした間、阪急は3度の日本一、5度のリーグ優勝を成し遂げている。その存在は少なからず勝利に貢献していたのだ。

「上田さんから、『チコさん、ガイジン来たら必ずあなたに任す』って言うてくれた。それはうれしかったわ。考えてみたら、日本のプロ野球、通訳も変わったな。今はどんなチームでも2〜3人おるよ。みんな幸せやと思うわ。しかしボク、日本をよう見てるな、ホンマに。50年、50年以上見てる」

 50年の野球界の変化を、バルボンさんはすべてしっかり見てきた。変化のなかでは阪急がオリックスとなり、近鉄との合併もあり、ブレーブス、ブルーウェーブ、バファローズとチーム名も変わってきた。それでもずっと、バルボンさんは球団での仕事を続けてきた。

「働きがいいんとちゃうか? ハッハッハ。しかしホンマに50年ちょっとなあ、半世紀や。まさか、日本に半世紀おるようになるなんて思わんかったわ。だからさっき言うた、日本に来てよかった、いうことやな。ホンマにもう、これ最高だと思うわ。最高や!」

 では、バルボンさんが日本に来る前から変わらず大事にしてきたものは何か。

「それは野球しかないわ。でも、今大事にしてるのは奥さんと娘やな。だから今はその次が野球や。ボク、野球取られてしもたら、空っぽになってしまう。野球ない日は寂しいわ。今でも一日、朝から大リーグの試合見て、夜は12時頃まで日本の野球のニュース見てる。今日もね、朝8時から大リーグ。それでこれからオリックスの試合や。とにかく野球大好きや。一日中見ても絶対、飽きへん」