八重樫幸雄が振り返る、個性強すぎなヤクルトの「助っ人外国人」たち (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――どうして、丸山さんがかわいそうだったんですか?

八重樫 丸山さんに向かって、マニエルは「素人コーチ」、みたいなことを面と向かって平気で言っていたからね。メジャー経験者は「ボスの言うことは絶対だ」という考え方だから、広岡(達朗)監督の言うことは絶対なんですよ。でも、その下のコーチのことは完全にバカにしていて、丸山さんがいつもその標的になっていた(笑)。

当時を振り返る八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi当時を振り返る八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi―― 一方、同時期に在籍していたヒルトンはどんなタイプの選手でしたか?

八重樫 1978年、春のキャンプで自ら売り込みにきたんだけど、彼を最初に見た時には、「えっ、あんなバッティングフォームで打てるの?」って思ったな。とにかく極端に背中をかがめたクラウチングスタイルだったから(笑)。ただ、常に全力疾走、全力プレーを心がける姿勢はチームにいい影響を与えたのは間違いないよね。とにかく、彼は開幕戦の初打席で結果を残したことがいいスタートダッシュになったよね。

――1978年開幕戦、ヒルトンは一番スタメンで起用されて、初打席でいきなりツーベースヒットを放ちました。ちなみに、作家の村上春樹さんはヒルトンを見て「小説を書こう」と思い立ったそうですね(笑)。

八重樫 えっ、そうなの? それは知らなかったけど、このツーベースヒットでヒルトンは勢いに乗れたよね。実力的にはそんなに光ったものはなかったけど、ボロボロのグラブを大切にしながら、常にガッツで頑張った。ハートの強さとハングリー精神が成功の理由だったんじゃないかな。

【ホーナー、ラミレスの思い出】

――1987年に「ホーナー旋風」を巻き起こした、ボブ・ホーナーはどんな選手でしたか?

八重樫 バッティングに関しては天才ですよ。軸がまったくブレない打ち方だし、ボールをとらえるポイントがしっかりしているから、どこにでも打球を飛ばせる。構え全体がコンパクトで、最初に見た時に「コイツ、日本人みたいな打ち方をするな」って思ったけど、見事に結果を出しましたよね。

――当時の報道では、「練習態度も真面目で常に全力プレーを怠らない」と絶賛されていましたが、チームメイトから見てどうでしたか?

八重樫 いやいや、全然練習しなかったよ。バッティング練習が終わったら、すぐに休むから。いつもロッカーで寝てるから、通訳に「アイツ寝てるぞ」って言ったら、「いや、目を閉じて試合に向けて集中しているんです」って言っていたけど、普通にコクリコクリしていたね(笑)。もっとしっかり練習していたら、もう何年もプレーできたと思うだけに、残念だったな。

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