ドラ1・大石達也を苦しめた重圧。「全然プロのレベルではなかった」 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

 環境に適応できてない頃から、首脳陣やメディアに「即戦力」と過剰に期待をかけられる。長期的パフォーマンスの土台となる体力や筋力、メンタルを身につけていないうちから起用され、目の前の結果を求められていく。結果、大きなスケールがあるのにプロで花開かなかった例は枚挙に暇がない。大石もそのひとりだ。

 プロ野球はもっと長い目で選手たちを計画的に育成したら、より多く大輪の花が咲くのではないだろうか。

「また変わってくるかもしれないですね。結局、変わらないかもしれませんけど。そこは『たら・れば』なので。いろんな人がいるので、(指導法や育成計画が)合う、合わないとかもありますし。どれが正解とかはないので」

 人の育成ほど難しいテーマはない。千差万別で、個人差が大きい。正解のないテーマだからこそ、深く向き合い続けなければならない。

 現役を上がったこの秋、所沢でキャンプの手伝いをしながら、大石の脳裏をよぎったことがある。西武の若手投手陣が伸び悩んでいる理由だ。

「最近で言えば上本(達之)さんだったり、野手は引退してすぐにブルペンキャッチャーとか裏方さんに回るじゃないですか。練習中に雑談的な感じで、『打つ時にこうなっているんですけど、どう思いますか?』と、選手とやりとりしているんですよ。

 でも、ピッチャーってみんな(FAで)出て行っちゃうじゃないですか。現役を上がってすぐ、選手に近いスタッフになってそういう話をできる人が少ない。そういうのもあるのかなって、このキャンプ中にけっこう思いました」

 上本は2017年に現役引退した翌年にブルペンキャッチャーになり、来季から二軍育成コーチに就任する。現役時代から若手にさりげなく、効果的なアドバイスを送ってきた男は裏方としてチームを支えたあと、指導者の道に進んだ。

 投手陣再建へ、上本に追随する気は大石にないのだろうか。

「僕レベルじゃダメなんですよね。一軍で本当に活躍していた人じゃないと。西口(文也)さんはすぐにコーチになりましたけど、コーチではなく用具係とかチームについている人に対して、選手から『ピッチングでこうなんですけど、どうしたらいいですかね?』っていう会話があまりないと思って。

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