あぶさんのモデル・永淵洋三は、元祖二刀流から大酒飲みの首位打者に (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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 4月30日の西鉄戦でも代打で同点タイムリー、救援登板、ライト守備でまたも勝利に貢献すると大きく一面で取り上げ、〈"ひとり三役"永淵フル回転〉と見出しを立てた。

「結構、人気はありましたよ。日生球場で『代打、永淵』ってアナウンスされたら、スタンドがワーッてなりましたから。で、その後に『代打しました永淵がそのままピッチャーに入ります』って言うと、またワーッとなる。そういう話題性はね、当時もありました」

 野球雑誌が〈三原がつくった新スター〉という特集記事を作り、グラビアページに〈三原魔術の秘密兵器〉という文字が躍った。チームは開幕から首位を走っていたから、三原采配の妙を象徴する「魔術」という言葉とともに、永淵さんは大いに注目された。

 三原自身、その起用法に関して、〈野球がチーム・ゲームである以上、一人三役のいまの使い方が、一番チームのため〉と雑誌に寄せた手記に書き、こう続けている。

〈彼はどちらかというと、血の気の多い選手である。血の気の多い選手はすばらしいプレーをする。しかし、始終試合に出しておると、だんだん迫力がなくなってくる。これは不思議だ。血の気があるのだから、しょっちゅう、そういう血の気のあることをやるかというと、結局そうはいかん。血の気のある選手は、しばらくじっとさせておいて、たまに出すと迫力のある展開をみせる〉

 まさに永淵さんが言うとおり、選手の人間性まで見た上での起用法だった。そして、確かに話題性では今の大谷翔平と通じる部分もあり、場内アナウンスだけで観客が沸くのはプロ野球観戦の醍醐味だと思う。永淵さんの場合は、必要に迫られて苦肉の策を講じたらかえって話題になり、人気が出たと言えそうだ。

「でもね、体が持ちません。だって当然、練習、毎日しますから。ピッチングやってるでしょ? そしたらバッティングコーチが『おまえ何やってんだ、バッティングせえ』と言ってくる。その繰り返しですよ」

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