村田修一コーチが行なった最初の改革。
「片手でスイングはやめよう」

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Nikkan sports/AFLO

ルーキーコーチ・村田修一の指導論 前編

 横浜ベイスターズ時代に2度の本塁打王に輝き、巨人に移籍後も球界を代表するスラッガーとして360本もの本塁打を積み重ねた村田修一。昨年9月にBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスで現役生活に幕を閉じ、今シーズンは巨人のファーム打撃兼内野守備コーチを務めている。

 7月17日時点で、ファームのイースタン・リーグで3位につける巨人のチーム打率は、リーグトップの.267と好調だ。指導者として早くも存在感を示している村田コーチに、指導で大切にしていることや、ここまでの手ごたえを聞いた。

昨年9月にBCリーグの栃木で引退し、チームメイトに胴上げされる村田昨年9月にBCリーグの栃木で引退し、チームメイトに胴上げされる村田

──現在、イースタン・リーグでチーム打率1位と、指導する選手たちが結果を出していることをどう見ていますか?

「もちろん数字がいいことは嬉しいです。しかしそれよりも、ファームで結果を残した選手が一軍に上がった時に『すぐに戦力になる』と首脳陣に思ってもらい、1試合でも多く起用されることを第一に考えています。今シーズンは、原(辰徳)監督もファームから上がった選手を積極的に起用してくれていますし、ファームのチーム全体のモチベーションは上がっていると思います」

──昨年10月にコーチに就任されましたが、目標にするコーチなどは頭に浮かんでいたのでしょうか。

「現役時代からいろんな指導者の方々にお世話になってきて参考にするところも多いですが、僕は昔から目標とする人を定めないようにしているんです。選手時代も『目標にする選手は?』という質問されたら『目標にされるような選手になりたい』と答えていましたけど、コーチとしても自分なりの指導法を確立したいですね。『目標にされるコーチを目指す』というのは変なので(笑)、『選手の手助けができるコーチになりたい』というのが目標です」

──打撃コーチとして最初に取り組んだことを教えてください。

「宮崎での春季キャンプが始まってすぐ、フリーバッティングの際に片手でスイングすることをやめようという話をしました。片手で振ると、バランスが崩れていても何となくバットを振れるものなんですが、両手だときれいに振れなくなります。とくに実績がない選手は、両手で強い打球を打てるようにならないと成績は残せませんし、一軍に上がることもできません。

 すでにバッティングができあがっている一軍の選手ならば、練習の時に手を離して気持ちよくスイングするのもいいでしょう。それでも、例えば岡本(和真)なども試合では最後まで両手を離しませんよね。ファームの選手は一軍で結果を出すために練習をしているわけですから、そのための練習で違うことをしてはいけない。なので、『ファームでは両手でしっかりバットを振る』という方針を、内田(順三/巡回打撃)コーチと金城(龍彦/ファーム打撃兼外野守備)コーチと相談して決めました」

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