大谷翔平と根尾昂に共通点。
中日の打撃投手が見た高卒ドラ1の力

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Kyodo News

 大阪桐蔭時代に投手と野手で活躍し、4球団競合の末に中日に入団した根尾昂。ケガの影響で戦列を離れていたが、5月4日のソフトバンクとの二軍戦で復帰し、『ショート一本で』と宣言したプロの世界で成長を目指している。中日で打撃投手を務める久本祐一は、フリーバッティングで実際に相対した打者・根尾をどう見ているのか。

 さらに、現役時代に中日と広島で主に中継ぎ投手として活躍した久本は、日本ハム入団後も"二刀流"を継続し、規格外の高卒ドラ1ルーキーとして注目を集めていた大谷翔平(現エンゼルス)との対戦にも言及。根尾との共通点、大谷の2年目以降の成長、昨オフに行なった右ひじの内側側副靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)の影響などについて語った。

エンゼルスで2年目のシーズンを送る大谷エンゼルスで2年目のシーズンを送る大谷――中日ドラゴンズの高卒ドラ1ルーキー、根尾昂選手がケガから復帰して二軍の試合に出場しています。久本さんは同チームの打撃投手を務めていますが、根尾選手に投げたことはありますか?

「フリーバッティングで2回投げました。1回目は、彼がキャンプを二軍で過ごしたあと、実戦に向けて準備を進めている時でしたね。投げる前に、村上(隆行)一軍打撃コーチに『根尾に投げる球は、通常の回転がいいボールでいいですか?』と確認して、OKをもらったので120km前後の回転がいいストレートを30球ほど投げました」

――その時の印象はいかがでしたか?

「本当に数カ月前まで高校生だったのかと疑いたくなりました。一番驚いたのは打撃の"柔らかさ"です。バットを鞭のように扱うことができ、体の軸もしっかりしていて腰の回転力もあります。打ち損じたコースのボールにもすぐに対応して打ち返してきましたから、修正能力も高いですね。2回目に投げた時はオープン戦を何試合か経験したあとで、いろいろと"迷っている"感じもありましたが、それだけきちんと考えながら取り組んでいるということでしょう」

――打撃練習を終えたあと、根尾選手と何かやりとりはありましたか?

「開口一番に『ナイスボールですね』と言われました。とくに若手の選手たちからは聞かない言葉なので、喜んでいいのか悲しんでいいのか戸惑いましたね(笑)。でも、悪意や自信過剰な印象はまったくなく、人間としての素直さを感じたので、すごく好感が持てました。

 私は打撃投手になって3年になりますが、打者から『おまかせで』と言われ、感想もなく打撃練習を終えられてしまうのが一番"消化不良"なんです。だから、『今日は内角を中心にお願いします』『ワンバウンドに近い低めの球を投げてください』と、リクエストしてくれる打者のほうが、こちらとしてもありがたい。根尾のように思っていることを口にしてくれると張り合いが出るんですよ」

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