「獲るつもりのなかった選手」杉谷拳士が栗山監督に言わせたいひと言 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘、スポルティーバ●写真 photo by Koike Yoshihiro,Sportiva

 それでも杉谷はプロの世界にしがみついた。

 2014年の87試合出場がキャリアハイ、打席数と安打数は2015年の192打席、49安打がキャリアハイ、ホームランは去年の3本がキャリアハイ。2016年には背番号を61から2へと変更、飛躍を期待されたが、未だにユーティリティを脱し切れていない。そんな現状について、杉谷が言う。

「監督はいつも『ケンシは代えが利かない選手だから』と言ってくれていますし、吉村(浩)GMも10年間ずっと、『お前は打てる』って魔法をかけるように言ってくれています。ただ、なかなか僕にその魔法がかからない(笑)。監督にも僕のほうから『頭から行く準備は常にしています』と魔法をかけるつもりでアピールしているんですけど、なかなか監督にも魔法がかからない(苦笑)。それでも僕はフルシーズン、全部の試合に頭からいくつもりでトレーニングを積んできていますし、控えでいいなんて思ったことは一度もありません」

 レギュラー定着への課題は、ムラをなくすことだ。杉谷は調子がいい時と、そうでない時の差が大きい。レギュラーとしてフルにやっていくためには、よくない時、疲れが出ている時を何とか凌いで、数字を極端に落とさないことが求められる。そして杉谷自身にもその自覚はある。

「僕はスイッチ(ヒッター)ですから、右がいい時と左がいい時があるんです。だから、いざ試合に出るとなった時、今日は相手が右ピッチャーだから左だけど、ヤバい、左がよくないって時があって、監督は『相手が右だからって左で打つことにこだわらなくても、好きにすればいいんだぞ』って言ってくれます。でも僕は、右ピッチャーに右で立つことによって、左ピッチャーの時によかった感覚を失うのがイヤなんです。そこから崩れていくこともありますからね。

 それよりも、もちろん技術もまだまだなんですけど、僕はそれ以前に気持ちで負けていると思うんです。『よっしゃ、いいところを見せてやろう』と気負い過ぎていつものスイングができていなかったり、『ヤバい、ここで打てなかったらどうしよう』と受け身になって甘い球を見逃したり......。だから、予想もしていない時に監督から『ケンシ、行け』と言われて考える間もなく打席に立った時にはカーンと打てたりするんですよね。要は、いつも同じメンタリティで臨むということが大事だと思いますし、清宮(幸太郎)を見てたらわかりますもん。アイツ、チャンスで打てなくても平然とベンチに帰ってきて、『くっそー』とかニコニコしながら言ってるし(笑)、そういうところは見習わなきゃと思います」

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