日本ハムの新人・田宮裕涼が目指す選手像。「走れる捕手になりたい」 (2ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 高い対応力ゆえにこじんまりとしてしまっていた打撃が、『このアドバイスで吹っ切れました』と、夏の東千葉大会で大暴れ。

 3番・捕手として6試合で21打数11安打、12打点、2本塁打。厳しい攻めも続いたが四球も7つ選び、投手陣を引っ張るインサイドワークも冷静さが光った。

 田宮とともにチームも躍進し、全国4強入りした2010年夏以来の甲子園出場まであと1勝と迫った。

 だが決勝戦は、3年連続出場を狙う木更津総合に序盤から主導権を握られて2対10と敗戦。試合後に田宮は誰よりも涙を流し、尾島監督からは「よくやった。お前のおかげでここまで来れたよ」と声をかけられた。

 それから3カ月後、再び涙する田宮の姿があった。「みんなが喜んでくれたし、本当にプロ野球選手になれたんだと思ったら......」と、日本ハムからのドラフト6位指名に今度は嬉し涙を流した。

 田宮は夏の大会終了後に尾島監督に進路について面談。尾島監督は自ら感じた評価、スカウトから聞いた評価を率直に明かし「1週間よく考えろ」と両親と相談するように促した。

 強豪大学からは「プロ志望届を提出しなければ(進学を今の時点で決めれば)特待生」という条件もあったが、夏に掴んだ自信と実績で決断を下した。主将としての責任に加え、常に幼い頃からの目標への迷いやプレッシャーと1年間戦い続けただけに「ドラフト指名の瞬間の気持ちは一生忘れません」と感慨深く頷いた。

 田宮の担当は、成田高のOBでもある岩舘学スカウト。今季からアマチュア担当からプロスカウトへ異動となったため、最後の担当選手が田宮となることに「何か縁を感じます」と話す。

 母校の後輩だからこそ常に厳しい視線で視察を続けてきたが、指名に至るまでの活躍を見て「足と肩もあるし、打撃でのタイミングの取り方やスイングの軌道は鍛えたら面白いと思わせる天才的なところがあります」と期待する。

 尾島監督も「心と体が強くなりました。彼の人柄はいいつながりを生む。人を蹴落とすような性格ではないのかもしれませんが、自分自身が頑張ればいい世界。ファンに愛される息の長い選手になって欲しいです」と背中を押す。

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