監督交代で好機到来の成瀬善久。実は独立リーグ行きを決めかけていた (3ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

──具体的にはどういったところですか?

「ヤクルトに移籍してから、他の選手から『見られているな』と感じるようになったんです。『何かを盗みたい、参考にしたい』と思ってくれることは光栄なことです。でも、ロッテ時代はチームに緊張感を持たせるために、あえて若い選手とも適度な距離を保っていたので、移籍先のヤクルトでは自らアドバイスをするべきなのかと悩んでしまって。

 ベテランの石川(雅規)さんが気を遣ってくれて、自分をいじってくれたりしていい雰囲気を作ってくれましたし、練習量が多い石川さんから僕自身が学ぶことも多かったんですけど......『キャラを変えるべきなのか』『ちょっと無理をしてでも練習メニューを増やすべきなのか』といった葛藤から、なかなか抜け出せませんでした」

──それでも、今シーズンの終盤には調子が上がってきていたとも聞きますが。

「『今年は自分のことだけ考えよう』と割り切って練習しているうちに、130キロ前後まで落ちていたストレートの急速を、140キロ前後まで戻すことができたんです。コントロールが生命線とはいっても、軸となるストレートに力がなければ話にならないですからね。ストレートだけでなく、いろんなボールがイメージ通りに投げられるようになってきたという手応えはありました」

──その手応えがあったからこそ、現役を続けようと思われたのですね。

「正直、2017年シーズンのパフォーマンスが改善されないようであれば、引退しようと考えていました。でも、今年は状態がよくなったので、納得がいくまでやり切りたいという気持ちが強くなったんです。妻にも、『(プロ通算)100勝を達成したい』と伝え、それに向けてトレーニングしています。あとは、松坂さんの存在も大きいですね。あれほどの大投手がソフトバンクで苦しみ、中日に移籍して再び活躍されている姿は励みになります」

──最後にオリックスの入団テストに向けた抱負を聞かせください。

「西村監督からも『体を作ってきてくれよ』という言葉をいただいているので、しっかり投げられる状態にして臨みたいです。首脳陣やファンの人たちに『成瀬はまだまだやれる』と思ってもらえるよう全力でプレーします。仮にテストに受かったら、何年やれるかはわかりませんが、チームに貢献できるよう頑張りたいです。

 そして野球人生の最後は、栃木で終えたいと考えています。栃木GBのご好意で1月は球団の練習場を使用させていただくことになり、飯原さんも『(テストを受けられることになって)よかったね。でも最後は栃木に戻ってこいよ』と言ってくださった。お世話になった方たちに恩返しするためにも、野球人生を全うしたいと思っています」

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