監督では二流もGMでは天下無双。今も球界に色濃く残る根本陸夫の教え (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

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 さらに1993年からは福岡ダイエーホークスの監督に就任。このときも球団オーナーの中内功から信頼され、同じように実質GMとして編成面にも携わった。

 まして、中内の要望を受けて、監督を務めている最中から、巨人のスーパースターだった王貞治の招聘に動くと、95年から王ダイエーが実現。世間をあっと言わせた大胆なトレードも敢行しつつ、チームがなかなか結果を出せないなかでも根本は王を守り、99年には球団社長に昇り詰めた。

 だが、その年の4月30日、根本は急性心筋梗塞に倒れ、72歳で生涯を閉じる。それでも同年にリーグ優勝、日本一を達成したダイエーはその後、パ・リーグの雄となり、球団がソフトバンクとなった後も王は会長としてホークスを支えている。すなわちジャイアンツの王をホークスの王にした、それがGM根本陸夫の最後の大仕事だった――。

 選手として三流、監督として二流でも、GMとしては天下無双。誰も真似のできない洞察力と日本全国に広がる人脈を武器に、低迷していたカープ、ライオンズ、ホークスに変革をもたらした男。その3球団すべてのオーナーの信頼を得て、球界のみならず政財界にまで顔を利かせ、その巧みな手腕で「球界の寝業師」の異名をとった男。それだけにとどまらず、日本球界の近未来を常に考え、人づくりを生きがいにしていた男。

 それだけ大きな存在である根本陸夫の全貌は難しくとも、生前の根本と接した関係者から証言を得て、親分肌といわれた人間性をはじめ、その言動、行動、仕事ぶりを今に伝えられないか。

 そう考えた筆者は、本ウェブサイトにて2014年より『根本陸夫伝』を連載。王貞治、土井正博、衣笠祥雄、大田卓司、森繁和、石毛宏典、工藤公康、大久保博元、森脇浩司など、監督経験者や根本に薫陶を受けた野球人、さらには経営者やアマチュア野球人までインタビューを続け、2016年に単行本『根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男』を刊行。2018年には、新たな証言も加えて文庫版を上梓した。より多くの方に、根本陸夫の存在を感じていただきたい。

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