2018.10.15

大瀬良大地がようやく本格化。
恩師と積み重ねた大学4年間の研鑽

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

「ほかの鶏が鳴いても、威嚇してきても、まるで木彫りの鶏のように泰然自若としています。最強の闘鶏になった証です」

 そんな故事に由来する言葉である。

「どうです、大瀬良にぴったりの言葉だと思いませんか? これを書いて、広島に行く時にあいつに渡してやろうと思うんです」

 九州共立大時代の大瀬良は、入学と同時に投手陣の軸として投げていた。リーグ戦通算38勝6敗、防御率1.07。全国大会にも4回出場して5勝をマーク。日米大学野球選手権大会にも2度選出。2013年のドラフトでは3球団から1位指名を受け、抽選の結果、広島が引き当てた。文字通りの”大器”である。

「ようやく木鶏になってきました。そう思って、こうやって書いているんですよ」

 4年間手塩にかけて、すべてを注ぎ込んだかわいい”愛弟子”が、まもなく巣立っていく。喜びと同時に寂しさもあるものだ。

「オオカミを飼いならして、ヒツジにしてはいけない。これ、監督の仕事だと思いますね」

 2010年の大学選手権、当時1年の大瀬良が中央学院大との1回戦に5回途中からリリーフでマウンドに上がった。打線につかまることはなかったが、4盗塁と走られまくった。

「いろんな方から『クイックやけん制の練習をもっとやらなきゃ』と、ずいぶん言われたんですよ。でも、今それをして、大瀬良の気持ちを小さくさせるより、気にせずにドーンといった方が、本人のためになるんじゃないかと思いましてね。ピッチャーは牙を剥いた戦士でいい。監督が使いやすいように飼い慣らしてはダメなんです」

 そしてもうひとつの思い出は、大瀬良の広島入りが決まり、その年明けの頃だったと思う。地元放送局の主催で『カープファンの集い』というイベントが東京で開かれ、そこで「大瀬良をはじめ、ドラフトで指名されたニューフェイスたちについて語ってほしい」と頼まれた。

 会場は全身真っ赤の100人近いカープファンで埋まっていた。そんな異様なムードのなかで、大瀬良について語った。”ヨイショ”は一切いらないから、本当のことを話してほしいと言うので、ありのままを話した。