広島ジョンソンの悲劇「バラバラに壊れた沢村賞トロフィー」の後日譚 (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 1年遅れの記念品贈呈となったが、ようやく手にした沢村賞のトロフィーはジョンソンの気持ちを再び奮い立たせた。

 沢村賞受賞の翌年(2017年)、ジョンソンは不本意なシーズンを送ってしまう。

 特に深刻だったのが、開幕直後に患った咽頭(いんとう)炎だった。医者からは「おそらく食べ物じゃないかな......」と言われたが、正式な原因を特定することはできなかった。

 このシーズン、ジョンソンは開幕投手に選ばれたが、阪神を相手に4回途中を8安打、5四死球で7失点し、KOされた。

 その数日後に体の不調を訴えたのだが、ジョンソンは「開幕試合の結果とは関係ない」と言う。

「球速は出ていましたし、いいスタートが切れたと思っていました。開幕戦も体調は悪くありませんでした。ただあの試合のあと、突然、左のリンパ筋が風船のように腫れあがって......。ひとりで病院に行くこともできないぐらいフラフラな状態で、40度の熱が1週間続きました。袋に氷を入れ、体中を冷やしていました」

 94キロあった体重は85キロまで落ちてしまった。ジョンソンは「つらい経験だった」と振り返る。

「体力が落ちてしまうと、試合で投げられる状態になるまでかなりの時間がかかってしまいます。本当に治るのか、怖かったですね」

 シーズン2度目のマウンドに上がったのは、開幕から2カ月以上が経った6月9日の楽天戦だった。ジョンソンは6回2失点の好投で、ようやく初勝利を挙げた。

 しかし、試練はまだ続いた。7月下旬の試合前のこと、ジョンソンが大きなストライドで外野の芝生を走っていると、突然、左のハムストリングから「パチン」という音が聞こえた。MRI検査を受けた結果、登録抹消となってしまう。

 その後、再びマウンドに上がったのはそれから約1カ月後の8月25日だった。結局、2017年のジョンソンは13試合の登板で6勝2敗、防御率4.01という成績に終わった。ちなみに、登板数13試合は沢村賞に輝いたシーズンの半分でしかない。

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