名コーチが嘆く、プロ野球キャンプ早々にリタイヤ選手が出るのはなぜか (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 これは私の持論だが、自主トレでスパイクを履いて走ることがないため、それが十分なトレーニングになっていないのではないだろうか。グラウンドを借りきってトレーニングしている光景をテレビなどで見かけるが、スパイクを履いて走っている選手は見かけたことがない。

 昔は......というのも嫌だが、かつては今のようなトレーニングシューズなどなかったから、自主トレでもスパイクを履いて練習を行なっていた。

 経験者ならご存知だろうが、スパイクはトレーニングシューズに比べて疲労度は高くなる。それを考慮してか、キャンプではアップやキャッチボールはトレーニングシューズで行ない、体が温まってからスパイクに履き替えるというのが習慣になっている。

 正直、甘すぎる気がするし、なにより履き替える時間が無駄というものだ。ヤクルトのコーチ時代、若松勉監督(当時)は私に共感してくれたが、定着しなかったのは残念だった。

 すべての練習とまでは言わないが、せめて自主トレのメニューの中でスパイクを履いて走る時間を設ければ、それだけでもしっかりした下半身強化になる。キャンプ初日から動きは変わるはずだ。

 それでなくても走る絶対量は、近年減ってきている気がする。それはトレーニングの考え方というより、日程的な問題が大きく影響しているのではないか。

 2月1日にキャンプが始まって、シーズン開幕が3月末。キャンプが始まってからおよそ2カ月で仕上げなければならないわけだが、こうなると首脳陣、特に監督は"実戦"に重きを置きがちになる。

 やはり、自分の目に見える形で選手たちが打てて、投げられるようになっていてほしい気持ちが強いのだろう。紅白戦や練習試合などの実戦が2月10日ぐらいから始まるようになったのも、そうした監督の意向をくんだものと考えられる。その代償として基礎トレーニングの時間は自ずと減っていった。

 年末のコーチミーティングで監督が「春のキャンプは走る時間を増やそう」と言っていたのに、いざキャンプが始まるとメニューがころっと変わり、打撃練習の時間が増えていた......なんて話は球団問わずいくらでもある。

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