25歳で投手転向と中卒20歳。
独立リーグ異色の2人はプロ入りなるか (4ページ目)
平日も仕事が終わった後に自主練習に励み、もはや遊ぶ時間などなくなっていた。伊藤が「それくらいやらないとダメだ」と取り憑かれるように練習した理由は、「独立リーグに挑戦しよう」という新たな目標ができたからだ。
20歳の秋、四国アイランドリーグのトライアウトを受験。緊張のため体が動かず、納得のいく出来ではなかったが、ドラフト8位で徳島に指名された。
高校野球経験がない、中卒の独立リーガー。どうしても「エリートに負けじ魂をむき出しにする雑草」というストーリーを想像したくなるが、伊藤からはそんな気配は微塵も感じられない。
「学歴も経験も、僕よりも上の選手ばかりなので、その点ではプレッシャーがなかったですね。ダメならダメでそれまでなので、怖いもの知らずというか......」
同年齢のプロ野球選手には、甲子園で活躍した安樂智大(楽天)や高橋光成(西武)らがいる。しかし、彼らに対する対抗心は伊藤にはない。「自分は自分」。その点では、中学で野球をやめた頃からぶれていない。
シーズンが開幕すると、伊藤の存在は意外な形でクローズアップされた。今季、高知ファイティングドッグスに加入していたマニー・ラミレスから、伊藤は来日初本塁打を浴びたのだ。
「マニーは雰囲気が違いました。どこに投げていいのかわからない感じでしたね。ホームランを打たれてしまいましたけど、いい思い出としてとらえています」
そんな伊藤だが、独立リーグ1年目にして獅子奮迅の働きを見せている。12試合に登板して3勝1敗、防御率はリーグトップの1.09と安定した投球でチームの前期優勝に貢献。5月15日の愛媛マンダリンパイレーツ戦では自己最速の147キロを計測した。
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