「最もキャプテンに不向きな男」浅村栄斗を指名した西武の狙いとは (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 近年、西武は中島宏之(現・オリックス)、赤田将吾(2014年に現役引退)、栗山巧がキャプテンを務めてきた。理想のキャプテン像について浅村に質すと、こんな答えが返ってきた。

「僕のなかでキャプテンといえば、栗山さんが一番しっくりくる。でも、そこは真似ることはできないので......。成績を出すことで示したいと思います」

 はたして、チームにとって浅村をキャプテンにすることでプラスはあるのだろうか。すると、この疑問に答えてくれたのが、炭谷銀仁朗だった。まず、「誰が見たって、(浅村は)キャプテンタイプじゃないですよ」と前置きした上で、"浅村キャプテン"の効果を語ってくれた。

「ウチのチームは、栗山さん、中村(剛也)さん、それに僕とか、アイツより年上だけど年齢の近い人間もいる。僕らがフォローしながら、アイツは今まで通りやってくれたらいい。そしてチームのことも考えるようになれば、いい方向へいくと思います」

 炭谷の話を聞きながら思い浮かんだのが、少し前に高校サッカー界から頻繁に聞こえてきた"ボトムアップ理論"だった。広島・観音高校の活躍で注目されたもので、選手ひとりひとりが徹底してチームのことを考え、そして行動する組織づくりを指す言葉だ。指導者の考えを選手が忠実に受け入れて動く"トップダウン"と対比される理論ともいえる。

 やんちゃ気質を持った浅村だからこそ、結果としてより大きなボトムアップ効果が見込める気がしたのだ。昔から浅村は、特に年上からかわいがられる一面を持つ。リーダーという意味ではまだ頼りきれない感じがあるからこそ、中村、栗山、炭谷らの関西出身の"兄"たちが中心となり、「しゃあないなぁ」とぼやきながらも浅村に手を差し伸べる姿が浮かぶ。

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