青木宣親が放った1本の「セカンドゴロ」にWBC制覇の可能性を見た

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

「自分の体のなかはグチャグチャですよ」

 思わず漏れた言葉に、青木宣親が背負ってきた重みをうかがい知ることができた。

献身的なプレーでチームを牽引した青木宣親献身的なプレーでチームを牽引した青木宣親 侍ジャパン唯一のメジャーリーガーがチームに合流したのは3月2日。翌日には強化試合に出場し、実戦わずか2試合で7日からのWBC本戦に臨んでいた。時差ボケの体と折り合いをつけながら、国の威信をかけた極限の戦いで身をすり減らしていたのだ。

「ルールだからしょうがないけど、帰ってきてすぐというのは相当キツかったですね。そのなかでもなんとかやっていかないと」

 侍ジャパンはホームでの1次ラウンド、2次ラウンドを6連勝で突破した。これほどMVP級の活躍をした選手が多い大会も珍しいだろう。全試合で日本の4番にどっしりと座って3本塁打8打点と結果を残した筒香嘉智。強敵・オランダ戦で5打点を記録するなど、3試合連続弾を放った中田翔。2次ラウンドのキューバ戦で先頭打者弾とダメ押し弾を放った山田哲人。積極的な打撃でチームに勢いをつけた松田宣浩。アクロバティックな二塁守備で世界を驚嘆させた菊池涼介。快速球と"お化けフォーク"を披露した千賀滉大。世界の大男たちを翻弄したアンダースロー・牧田和久。そして大会のラッキーボーイとなった小林誠司......。

 そんなチームにあって、3番打者を務めた青木は20打数4安打、打率.200という平凡な成績に終わった。2次ラウンドでは12打席ヒットから見放された時期もある。自分のタイミングでスイングしているのに投球に差し込まれるシーンも見られ、状態の悪さがうかがえた。

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