「小久保采配を絶賛!」まさかの織田信長、WBC1次ラウンド観戦記 (4ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

「あれが坂本のタイムリー、ひいてはその後の大量得点の呼び水になったのだ。ノーマークだった選手の盗塁で、相手投手のイエラが受けた衝撃は計り知れないであろう。どうじゃ、ワシがキューバ戦を『桶狭間』と言った意味がわかったか。敵将の今川......じゃなかったマルティ監督をはじめ、見ていたすべての日本国民、いや走った中田本人さえもアッと驚く奇襲攻撃じゃ。このような奇策を思いつくのは、天下広しといえどもワシと小久保監督くらいであろうな。

 案の定、キューバはランナーを2塁に背負い、次の盗塁に怯え、そして1点も許せないという大きなプレッシャーにさらされた。あのような重圧はワシも経験があってな。よく敵が同盟を組んで包囲されていたからのう。何度も何度もしつこかった。いつも絶体絶命じゃった。ワシはそれを切り抜けてきたが、キューバは屈した」

 切り抜けられなかった本能寺のことをスルーして語る信長氏だが、結局、試合はこの5回の得点で決し、日本が大事な緒戦で白星を挙げた。氏は総括する。

「もちろん、他のサムライたちの活躍も素晴らしかった。特に、どんな打球も曲芸のようにアウトにしてしまう青木宣親、菊池の動きは、ワシが重用した甲賀の忍(しのび)のようじゃ。あの鉄壁の守備は、ワシが考案して長篠で使った馬防柵の如しよ。この選手たちと、ワシの知謀を受け継ぐ小久保采配があれば、もはやWBC制覇は確実じゃ! 確実!」

 信長氏は、やはり最後も自慢話で締めくくった。しかし、能ある鷹は爪を隠すという。小久保監督といえばホークスである。信長氏の言うとおり、不安視される小久保采配には、とてつもない知略が隠されているのかもしれない。ここまでファンをやきもきさせた、一見不可解に思える投手交代や作戦の数々は、実はこれから2次ラウンド、決勝ラウンドで戦う強豪国を欺き、油断させるための深謀遠慮だったのかもしれない。

 信長氏とともに、侍ジャパンの今後に期待したい。

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