短すぎた絶頂期。「しくじりエース」小松聖が若手に伝えたいこと

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 2007年7月16日の救援によるプロ初登板(対ロッテ戦)から数えて159試合。4年ぶりに先発登板を果たしたオリックス・小松聖(こまつ・さとし)は、打者ひとりに投げると金子千尋と交代。これが最後のマウンドとなった。

来年からオリックスの二軍投手コーチとして第2の人生をスタートさせる小松聖来年からオリックスの二軍投手コーチとして第2の人生をスタートさせる小松聖 9月29日に京セラドームで行なわれた小松の引退試合のニュースに触れ、「あの小松か......」と思い出した人も多かったのではないだろうか。多くのファンにとって、小松の記憶は「あの1年」でつくられたのだろう。

 JR九州のエースだった2006年秋、大学・社会人ドラフトでオリックスから1位指名を受けた。ドラフト翌日の毎日新聞の紹介記事には「最速145キロの速球にスライダー、フォークを織り交ぜる右の本格派」とある。驚くようなスピードボールを持つわけではないが、鋭い腕の振りから投じる変化球のキレは抜群で、奪三振率の高さが持ち味の投手だった。

 入団1年目のシーズン後半にプロ初勝利を挙げた小松だが、一気に輝いたのは2年目の2008年。開幕当初は中継ぎだったが4月中に先発に転向すると、交流戦以降、怒濤の勢いで勝ち続けた。最後は9連勝でシーズンを終えるなど、通算15勝3敗、防御率2.51。圧巻の成績を残し、新人王を獲得した。

「来季はほかのタイトルを獲りたい」と語るなど、次期エースの活躍を誰もが予感した。しかし、翌年は17試合に登板するも1勝9敗、防御率7.09。結局、2010年以降の7年間で挙げた勝ち星はわずか8勝。最後まで復活を果たすことはなかった。

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