巨人・田口麗斗を覚醒させた「ものすごい向上心」と「142勝左腕」

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 表情にはまだあどけなさも残るが、マウンドに立てば大人びたピッチングで打者を翻弄していく。田口麗斗(たぐち・かずと)は広島新庄高からプロ入りし、3年目で2ケタ勝利を挙げた。巨人で高卒3年目以内に10勝以上をマークしたのは、2年目の1987年に15勝を挙げた桑田真澄以来で、ドラフトで指名された高卒左腕で10勝を達成したのは球団史上初のことだった。

今シーズン、自身初の2ケタ勝利をマークした田口麗斗今シーズン、自身初の2ケタ勝利をマークした田口麗斗 伝統球団での快挙達成は大々的に報道されたが、本人はざわつく周囲を冷静にかわし、浮かれる様子はまったくない。

「もちろん嬉しいことなんですけど、目標を考えると、もっと上の段階を目指していきたいです」

 少しだけ笑顔を交えながら、落ち着いた口調で語った田口。「通過点」とまでは言わないが、満足を抱く数字でもないということなのだろう。

 今季、大きくブレイクした田口だが、すでに自分の投球スタイルは持っていた。力みのないフォームから、ストレート、スライダー、チェンジアップを投げ込んでいく。140キロ前後のストレートは球速表示以上に速く感じられ、相手打者を押し込んでいく。

 切れのよさを出すために意識しているのは、リラックスした状態から、いかに全開の力を無駄なく放出させるかということ。田口は言う。

「自分みたいな小さいピッチャー(身長171センチ)には必要なのかなと思います」

 大柄な選手に比べれば、どうしても馬力で劣ってしまう。「100から100の力を継続して出すことは難しい。0から100に近い力を出せるように」と、効率よくエネルギーを指先から球に伝えるために、ずっと意識してきたことだ。

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