ひちょり少年を笑う者は、いつも「野球」で黙らせてきた (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro寺崎敦●取材協力 cooperation by Terasaki Atsushi

「なんで新庄を獲るんだよ!」

 メジャーリーグで3年間プレーしていた新庄剛志が日本球界に復帰することになり、日本ハムと契約を結んだ。日本ハムは前年には坪井智哉を交換トレードで獲得しており、森本にとっては2年続けて同じ外野手の強敵が入団したことになる。当初、新庄に対しては「敵意」しかなかった。

「あとで新庄さんに言われましたよ。『お前は酷かった』って(笑)。何を言っても、『フーン』って態度で。よほどツンツンしていたんでしょうね」

 新庄と仲良くなれたきっかけが何だったかを、森本はいまだに覚えていない。ただ、ロッカーが隣で、同じメーカーの用具を使っていたことから話が弾み、守備についてアドバイスをもらえるようになったという記憶は残っている。

 ある日のロッカーで、森本は新庄とこんな会話をした。

「新庄さん、遠征先では何してるんですか?」

「メシ食いに行くよ」

「そうなんですか。一緒に行きたかったなぁ」

「......なんでお前、言ってこないの? お前から言ってこいよ」

「いいんですか?」

 そして次の機会に、森本は思い切って新庄を食事に誘ってみた。新庄はその誘いを快諾して、食事の席でこんな話をしてくれた。

「お前もそのうちわかると思うけど、後輩から声を掛けられるのって嬉しいから。そもそもなんでオレから声を掛けなきゃならねぇんだよ。お前が行きたいなら、お前が声掛けてこいよ」

 森本は「なるほど」と思いながら、新庄に言われたことをそのまま自身の後輩に言ってみた。「お前から誘って来いよ」と。そして実際に「食事に連れていってください」と後輩から言われてみて、確かに嬉しさを感じたのだった。

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