デストラーデ「野茂は人間だけど、イチローはエイリアンだね」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

―― 今後、日本人野手が試合に出るには、何が必要だと思いますか。

「スピードであったり、松井秀喜のように打点を稼ぐ能力に長(た)けていたり、特殊な能力が必要かもしれないね。対戦回数が少ないうちは、投手の方にアドバンテージがある。さっきも言ったけど、その投手がどんなスピードで、どんな変化球を持っているのかという情報が少なすぎる。その中で結果を残すのは、何か特別なものがないと厳しいだろうね。逆に日本人の投手は、最初の1、2年は相手も情報がないからいい結果を残すけど、3、4年目になると"まあまあ"の投手になって、徐々に成績が下がってくることもある。これはメジャーがコンピューターやスコアラーをフルに使って、投手の情報を丸裸にしてしまうからで、そういう意味で日本の投手は3年目から4年目が勝負のシーズンになるだろうね」

 そしてデストラーデは「いつも安定した成績を残したイチローは本当にすごい」と語り、こう続けた。

「イチローは宇宙のどこからか来たエイリアンだよ。でも野茂はヒューマンビーイング(人間)だったね(笑)。僕は95年に西武に復帰してその年で引退するんだけど、その時、オリックスにイチローがいたんだ。誰もが『イチローはすごい』って言っていたけど、最初の印象は細いということ。でも、彼のバッティングを見て『何だこれは!?』と思ったね。あの時は振り子のように右足を大きく動かしていたけど、ホームランは打つし、平凡な内野ゴロもヒットにしてしまう。それにワンバウンドのボールも打つ。これまでの野球人生で見たこともない選手だった。たとえるなら、ウェイド・ボッグス()の打撃とビンス・コールマン()の足や、トニー・グウィン()の美しいスイングとリッキー・ヘンダーソン()の足を兼ね備えた、そんなすごい選手だということだよ」
ウェイド・ボッグス...80年~90年代にかけてレッドソックスやヤンキースで活躍し、首位打者5回、シルバースラッガー賞8回を獲得した好打者。
ビンス・コールマン...80年代中盤から90年代終盤にかけてカージナルスやメッツなどでプレイ。85年から90年まで6年連続盗塁王に輝き、85年から3年間はシーズン100盗塁以上を記録した。
トニー・グウィン...81年から20年間パドレスでプレイし、首位打者8回、シルバースラッガー賞7回を獲得。メジャー通算3141安打を放った屈指の好打者。
リッキー・ヘンダーソン...80年~00年初頭にかけてアスレチックスやヤンキースなどでプレイし、俊足好打の1番打者として活躍。12度の盗塁王に輝き、90年にはア・リーグのMVPに選出された。通算1406盗塁と2295得点はメジャー歴代1位。

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