球宴初出場。DeNA田中健二朗が亡き母に誓う全力投球 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 長いシーズンを経験したことのない人間にとってみれば心身ともに良好なコンディションを保つのは至難の業だ。そんなタイミングでのオールスター出場となったわけだが、田中はこの場で復活への足掛かりとなるヒントを得られないかと考えている。

「せっかくなので色んな選手に話を聞いてみたいですよね。ただ、人と話すのが得意じゃないので、どこまでできるかわからないですけど(苦笑)。だけど、見ることはできるので、何かひとつでも吸収できるように目を光らせたいと思います。オールスターの出場もそうですが、今年は自分の中で野球というものが変化してきているのを実感しているんです。もっと成長できるんじゃないかと思っているし、今は壁にぶち当っていますけど、この壁を越えたら、何かまたひとつ新しいものが見えるんじゃないかって。だから絶対に乗り越えてやろうと思っています」

 特に今年は頑張らなければいけない理由がある。キャンプ中の2月28日、田中は母親を心筋梗塞で亡くしている。中学時代から寮生活だった田中は、母親と一緒の時間を過ごすことが少なく「今から思えば、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったって考えるんですよね」と、あまり親孝行できなかったことを悔やんでいる。

「だけど、前を向かないといけないので……。その思いは野球にぶつけたいと思います。きっとお母さんはどこかで見てくれているはず。とにかくオールスターでいいピッチングをしたいですね」

 一流の証である夢の球宴への出場。この晴れ舞台で田中はどんなピッチングを見せてくれるのだろうか。

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