両親に「初休業」を決断させた、鈴木尚広19年目の「初球宴」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「体が緩んでいると、自分の骨や関節がどのように動いているかがわかります。体が疲労とともに硬くなってくると、『この部分の動きが悪くなってきたな』というふうに感じることができる。体の内側の感覚は1日1日違うので、毎日やっています。頭は疲れるんですけど、こうして積み重ねていくことで、徐々に自分の体と対話するような感覚が磨かれていくんです」

 年々、「体を緩める」感覚は研ぎ澄まされているという。その結果、自分が持っている体の力を最大限使えるようになった。40歳近い年齢にもかかわらず、スピードの衰えを感じることはない。

「タイムを計っても一番なんで(笑)。若い選手と一緒に走っても驚かれています。まあ、タイムはあくまで指標で、タイムがいいから盗塁ができるわけではないんですけどね」

 毎年、「50メートル走5秒台」といった触れ込みでプロの世界にやってくる快足ランナーはいるが、意外に盗塁技術が高くない選手は多い。実は、巨人に入団した当初の鈴木もそうだった。プロ2年目には、イースタンリーグで盗塁成功0、失敗6という成績が残っている。

「自分としての確固たる考え方が確立されていませんでした。そういう失敗を経験して怖さを知るなかで、マイナスを少しずつプラスに換えてこられた。あの失敗があったからこそ、今があると思います」

 走塁の道を追求し続けてきた19年の時を経て、いよいよ鈴木がオールスターの舞台に立つ。すでに原監督からは「いい場面で起用する」と言われているという。パ・リーグの捕手陣は嶋基宏(楽天)と炭谷銀仁朗(西武)の2人が選出されている。多くのファンが彼らの肩との「勝負」に注目するはずだが、鈴木は意外なことを口にした。

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