名手・駒田徳広が阿部慎之助に授ける「一塁手の極意」

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 日本一奪回に向け、巨人・原辰徳監督はゼロからのスタートという意味を込めて「チームを解体する」と宣言した。その目玉のひとつが捕手・阿部慎之助の一塁コンバートだ。原監督はコンバートの理由を「バッティングに専念させるため」と説明した。しかし、阿部の一塁守備に対する不安はないのだろうか。そこで、巨人と横浜で一塁手として歴代最多の10度のゴールデングラブ賞に輝いた駒田徳広氏にファーストの守備の奥深さを聞いた。

今季からファーストに挑戦する阿部慎之助今季からファーストに挑戦する阿部慎之助

 阿部選手のファースト転向の話を聞いた時、これで心置きなくバッティングに集中できるなと思いました。キャッチャーというポジションは、立ったり座ったりするので膝や腰にどうしても負担がかかってしまいます。阿部選手も長年マスクを被り続けてきましたら、肉体的に厳しい部分があったと思うんです。昨年の阿部選手のバッティングは、どこか満足にスイングできていない印象を受けました。

 今年はファーストを守るということで体の負担は軽減されるでしょうし、阿部選手の持ち味である豪快なバッティングが復活すると思います。それにファーストはキャッチャーと違い配球を考えなくてもいい。精神的にも随分と楽になるはずです。言い方は悪いですが、ファーストは普通に捕球さえできれば誰でもできるポジションなんです。

 ただ、少し意識を変えるだけでいろんなものが見えてきますし、新しい発見がいっぱいあるポジションでもあります。その面白さに気がつけば、やりがいのあるポジションだと思います。それに一塁手の意識が変われば、内野全体のレベルも上がってきます。

 たとえば、二遊間がいい動きをしたとしても、サードやファーストが緩慢だと、動きの良さが消されてしまう。内野手全員が高い意識を持たないと、本当の意味での守備力は上がってきません。サードもファーストも一生懸命動くことで内野の統率がとれ、鉄壁の内野陣が生まれるんです。

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