FA制度、11年目のルール改正が選手の野球人生を変えた

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images

フリーエージェント20年史(3) 2003年~2007年

 FA制度導入から11年目の2003年6月、ルールの改正が行なわれた。1993年以降のドラフトで採用されてきた逆指名制度を使ってプロ入りした選手も含めた全選手が、累計9年経過で権利を取得できるように変更となり、2003年オフから導入された(1993年から2002年までドラフト逆指名選手のFA権利取得期限は累計10年)。わずか1年ではあるものの、取得年数が短縮されたことは、大きな効果をもたらすことになった。

1年間の準備期間を得たことがアスレチックスとの契約につながった藪恵壹1年間の準備期間を得たことがアスレチックスとの契約につながった藪恵壹 2004年オフにFA宣言した藪恵壹(阪神)にとっても、このルール変更は夢の実現に向けて大きく役立った。改正前なら2004年シーズン中に取得だったが、改正にともない2003年10月に早まった。だが、もともとメジャー志向の強い藪ではあったが、この年は「急に取得期間が短縮され、FAについて時間的に考える余裕がなかった」と、宣言せずに残留。それでも、当初より早くFA権を取得できたことはプラスとなった。藪はメジャー移籍に向けて1年間を準備に充てることができ、2004年オフは36歳になっていたものの、年明けまで粘ってオークランド・アスレチックスとの契約にこぎつけ、念願だったメジャーリーグのマウンドに立ったのである。

 ただ、藪のようにオールドルーキーとして成功する例は、稀(まれ)なケースだ。身体が資本の野球選手にとって、少しでも早くFA権を取得できれば、それだけ次のチャンスも生まれやすく、選択肢が増えることになる。2003年オフ、28歳でFA宣言し、ニューヨーク・メッツに移籍した松井稼頭央は、所属する西武との交渉で、「28歳だと、メジャーにチャレンジするには一番いい年齢だと思う。アメリカに行くと、FAは6年で取れる。僕はその時、34歳。今、メジャーに行くのがいい」と訴えた。実際には松井稼頭央の場合、メッツとの契約条項に「再取得は3年後」と盛り込まれたことで、2006年オフにFA権を取得。ルール改正の恩恵を受けたわけではないが、20代後半でFA移籍したことで、その後の野球人生は多くの選択肢に恵まれることになった。

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