防御率2点台に復帰。なぜ阪神の投手力は上がったのか? (3ページ目)

  • 岡部充代●文 text & Okabe Mitsuyo
  • photo by Nikkan sports

「昨年の藤井は、ケガで不本意なシーズンを過ごした。その間に小宮山(慎二)がけっこう使われて、今年は日高(剛)も入ってきた。藤井がレギュラーに一番近いけれど、立場が確立されていない中で開幕を迎えたから、試合に出たい、そして勝ちたいという気持ちが、より強いと思う。ベテランキャッチャーは、勝たないと試合に出る意味がない。負けるなら、若い選手に経験を与えるほうがチームのためになるから。どのポジションもそうだけど、力の違いを見せつけて、初めて、ベテランは試合に出られるものだからね」

 これから夏場にかけて、投手陣は苦しくなると言われる。疲労が溜まってくることと、相手チームにデータが蓄積され、攻略されやすくなるからだ。その時期を乗り越えて、優勝争いの佳境となるシーズン終盤まで、防御率をキープするにはどうすればいいのか――。矢野氏がポイントに挙げたのは、やはり捕手だった。

「キャッチャーがより大事になると思う。投手陣がいいときに勝つのは当たり前。たとえば、状態がいいときのJFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)なら、僕じゃなくても相手を抑えられた。むしろ、ふらふらしている投手をどう引っ張るかが、キャッチャーの仕事。これから夏場を迎えるし、このまま行けば、今度は優勝争いという、もっと重いものがチームの中に生まれてくる。勝負の分かれ目で、いかに試合の流れを呼び込むか……。あとで、『こうしておけばよかった』と、後悔することのないようにしてほしい」

 当然ながら、野球は防御率を争う競技ではない。だから矢野氏は、「防御率は下がっても、いかに勝つかが大事」と念を押した。「防御率が低ければ、勝つチャンスは増えると思うけど、それを気にして野球をやることはない。極端に言えば、10点取られても勝てばいい。そういう割り切りも、時には必要だと思う」。

 防御率とは不思議な数字だ。現在のタイガースで言えば、防御率リーグ2位のスタンリッジは3勝5敗と黒星が先行し、同12位のメッセンジャーはハーラーダービートップの6勝をマークしている。防御率と勝敗は直結しないから、交流戦でチーム防御率が少しくらい下がっても、気にすることはない。優勝を目指して戦い続ければ、シーズンが終わったとき、自然と「今年は防御率が良かった。投手陣がよく頑張った」という評価が下されるはずだ。

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