防御率2点台に復帰。なぜ阪神の投手力は上がったのか?

  • 岡部充代●文 text & Okabe Mitsuyo
  • photo by Nikkan sports

勝利したメッセンジャー(右)とハイタッチするキャッチャーの藤井彰人(左)勝利したメッセンジャー(右)とハイタッチするキャッチャーの藤井彰人(左) セ・リーグが「2強4弱」の様相を呈している。貯金を持っているのは1位・巨人(32勝21敗3分け)と2位・阪神(32勝22敗2分け)だけで、3位以下はすべて借金生活。その境界線には、防御率2点台と3点台という、分かりやすい数字があった(6月6日現在)。

【チーム防御率@セ・リーグ】
1位 巨人 2.97
2位 阪神 2.99
3位 中日 3.93
4位 広島 3.50
5位 DeNA 4.59
6位 ヤクルト 3.89

 特に阪神は、開幕から投手陣が好調で、4月には4試合連続完封を記録。12球団トップのチーム防御率を誇っていた時期が長くあった。交流戦に入ってやや失点が目立つようになり、6月3日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)での12失点でチーム防御率は3点を超えたものの、直後の対西武2連戦ですぐに2点台に戻した。

 ちなみに昨季、阪神のチーム防御率は2.65。単純に数字だけを比較すると、今年のほうが悪い。ただ、各球団ともホームラン数が急増するなど、得点が増えていることを考えれば、昨年よりもむしろ、投手力は上がっていると言えるだろう。

 ではなぜ、阪神のチーム防御率は良いのか。「投手陣が頑張っている」のは当然として、その背景にあるものを考えてみたい。

 まずひとつ目の要因は、味方打線が点を取ってくれるようになったこと。昨季の阪神は、とにかく打てなかった。チーム打率.236はリーグ4位。得点圏打率は.227まで下がり、411得点(1試合あたり約2.8点)はリーグ最下位。それが今年は、チーム打率が.263まで上がり、現時点の221得点を144試合に換算すると、なんと568点(1試合あたり約3.9点)にもなる。

 この得点力アップがバッテリーに好影響を与えていると、阪神OBで長く「虎の正妻」を務めた矢野燿大氏は言う。

「味方が点を取ってくれないと、どうしてもピッチングが窮屈になる。1点も取られまいとして、四球などで結果的にランナーを溜めてドカン......というパターンになりやすいけど、今年はそれが減っているんじゃないかな。キャッチャーは相手投手を見て、試合展開を予想するもの。このピッチャーを相手に3点取られたら苦しいとなれば、リードも窮屈になってしまう。逆に、打線への信頼があれば、『ここは1点与えてもOK』と余裕を持って攻めの投球ができる」

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