【WBC】侍ジャパン2009「若きエースたちが見た松坂大輔」 (2ページ目)

  • 中村 計●取材・文 text by Nakamura Kei
  • photo by Taguchi Yukihito

投手陣の中心にはいつも松坂大輔がいた

 世代交代を実感する眺めだった。

 2月16日にスタートした宮崎合宿のときから、松坂はいつも投手陣の輪の中心にいた。たとえば、アップをしているとき、松坂がいて、ダルビッシュ有がいて、涌井秀章がいて、田中将大がいた。

 その4人は、磁石が引き合うように一緒にいることが多かった。涌井は松坂より6歳若いが、横浜高校、西武の後輩にあたる。その涌井とダルビッシュは同級生で仲が良く、自然とダルビッシュも松坂とつながっていた。そして、そのダルビッシュを兄貴分と慕う最年少の田中も、やはり松坂に畏敬(いけい)の念を抱いていた。

 彼ら4人は実力だけでなく、華があった。全員が高校時代に甲子園で決勝のマウンドを経験している。合宿中も観客の視線は、自然と彼らに集中していた。その光景は、日本人投手の中心が、今そこにあることを物語っていた。そんな空気を察していた最年長の渡辺も、今大会は「目立たないようにやってますよ」と苦笑交じりに語っていたものだ。

 涌井、ダルビッシュ、田中の3人は、日本の次期エースになりうる存在だ。そんな3人は、キャッチボールのときから松坂の一挙一動に注目していた。松坂も「見られていることは意識していた」と、彼らの熱い眼差(まなざ)しを十分に感じ取っていた。

 久々に松坂とチームメイトになった涌井は、明るい表情でこう話す。

「やっぱり、いろんなことを聞ける人がいるというのはいいですね。国際舞台における心構えとか。何を教えてもらったかは秘密ですけど」

 松坂の後継者として、いの一番に名前の挙がるダルビッシュも、トレーニング法や調整法など、松坂に積極的に質問をぶつけていた。

 ダルビッシュは、松坂、岩隈久志と形成する3本柱の中では最もWBC使用球への対応に苦労していたが、松坂に「気にしすぎるな」とアドバイスされ、自分本来の姿を少しずつ取り戻していった。


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