【プロ野球】「嬉しい誤算」は生まれるか?逆襲の鷹へ、ソフトバンクが動き始めた! (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Nikkan sports

 経験値が浅く不安定な先発陣。昨季のとの差は数字に現れている。先発の安定度を指数で表すQS(クオリティ・スタート)達成率。先発で6回以上を投げて自責3以内のそれが、昨季は79.17%を誇ったが、今季は67.74%まで落ち込んでいる。先発が5回を持たずに降板した試合は「11」を数える。

 当然ながら、その負担はリリーフ陣にのしかかる。だが、こちらの顔ぶれも苦しい。今季は守護神の馬原孝浩が右肩の手術で不在の中、ファルケンボーグが抑えを務めた。今季16試合に登板して失点したのはわずか1試合と抜群の安定感を誇っていたが、連投が利かないタイプで、5月18日に右肩違和感を訴えて登録抹消されると、交流戦での登板はゼロだった。

 この緊急事態に、やむなくセットアッパーの森福允彦を暫定守護神とするも「7、8回と9回では緊張感がまるで違う」と本人が言うように、6月6日の巨人戦(ヤフードーム)で同点の9回に失点して黒星を喫し、"本職不在"を露呈する形となった。さらに森福の抜けた中継ぎ陣は火の車。開幕前に緊急補強したメジャー帰りの岡島秀樹が開幕24試合無失点と"奮投"しているのがせめてもの救いだ。

 期待したい打線だが、こちらも振るわない。得点源として最も期待のかかる本多雄一と内川聖一の不振はチームとしては計算外だった。本多は打率.238、12盗塁(リーグ4位)。昨年首位打者の内川も交流戦での打率が.198と大ブレーキ。シーズン打率も2割7分台まで落ち込んだ。

 6月22日から再開するリーグ戦に向けて、秋山幸二監督も「交流戦は投打がうまく噛み合わなかった。全体的に点が取れなかったな。打つ方の得点力が上げられるかどうか」とポイントを口にする。本多は6試合連続安打で交流戦を締めくくり、「タイミングが上手く取れてきた」とここにきて復調の気配を見せ、巻き返しに自信をのぞかせた。内川は19日の全体練習で王貞治球団会長からマンツーマン指導を受け、居残りロングティーで感触を確かめるなど必死な姿勢を見せた。「逆襲の鷹」へ、このふたりの活躍は今後のカギとなる。

 また、投手陣強化に関しても、6月以降に球団フロントが慌ただしく動いた。育成枠から中継ぎ右腕の柳瀬明宏を支配下登録。早速一軍に名を連ねて、セットアッパーとして好投を見せている。さらに交換トレードでは巨人から昨季11セーブをマークしたロメロを獲得。6月14日には先発要員として新外国人右腕のドイルの入団を発表した。

 この中から、今度は「嬉しい誤算」が生まれれば、今シーズンのパ・リーグはまだこれから混戦模様となるだろう。

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