【プロ野球】解説者たちが絶賛した好リード!好調ヤクルトに中村悠平あり

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 日下康祐●写真 photo by Kusaka Kosuke

バッティングも成長著しい中村バッティングも成長著しい中村 現在、負傷により戦線離脱中の相川亮二に代わり、ヤクルトの扇の要を任されているのが入団4年目の中村悠平だ。その中村に一躍注目が集まったシーンがあった。それが4月22日に神宮球場で行なわれた巨人戦。3対2とヤクルト1点リードで迎えた6回表、巨人の攻撃の時だった。

 一死満塁で打席には長野久義。ここでヤクルトベンチは先発のロマンから増渕竜義へとスイッチした。ところが増渕の制球が定まらず、初球、2球目とも大きくベースを外した。そして何としてもストライクが欲しい3球目。ここでストレート一本狙いの長野に対して、中村が選択したのはシンカーだった。これを長野が空振りすると、続く4球目、5球目もシンカー。結果は3球続けて空振りし、三振に打ち取った。テレビの解説をしていた金村義明氏は「この配球はすごい!」と唸り、黒木知宏氏も「あの配球には感性とセンスを感じる。すごいキャッチャーが出てきた」と絶賛した。「次こそは......」と、ストレートを待ち続けた長野の裏をかいた大胆な攻めだった。続く村田修一もセカンドライナーに仕留めて絶体絶命のピンチをしのいだヤクルトは、この試合を勝利し、巨人相手に3連勝を飾った。

 中村は福井商業高時代、2年夏、3年夏と2度の甲子園に出場し、08年のドラフト3巡目指名でヤクルトに入団。1年目はイースタンリーグで60試合に出場し、規定打席には届かなかったが打率.301をマーク。2年目にはファーム(二軍)のレギュラー捕手として経験を積み、3年目の昨年は一軍に長く帯同し、13試合に出場。ペナントレース終盤の緊迫した戦いも経験した。そして4年目、自打球により負傷した相川の代役として、4月12日の横浜DeNA戦から先発出場を続けている。

 先の巨人戦をテレビで観ていた元福井商監督の北野尚文氏は、教え子の頑張りに高校時代の姿をあらためて思い出したという。

「悠平は1年の秋からレギュラー捕手になったんですけど、入部してきた時から野球に対して貪欲でした。練習試合とかで、私はバッテリーを横に座らせて配球や打者の特徴の話をするんですけど、そういう時も熱心に聞いていましたね」

 練習中も気づいたことはメモを取り、下宿先でも夕食の際は野球中継を見ながらリードの勉強をしていたという。

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