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「翔平は翔平」──走る姿に表れていた大谷翔平の異変 ドジャースの判断の是非と、間近で見ていたふたりのコーチの視点 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【三塁コーチは上向きと分析】

 一方、三塁側から大谷を見ていたイベルの見方は少し違った。8月10日の本拠地でのカンザスシティ・ロイヤルズ戦では、フレディ・フリーマンの安打で二塁走者の大谷が二度生還した。いずれも本塁へ回したのがイベルだった。

「彼の状態がよくなっているのはわかります。実際、走りもよくなっています」

 大谷がベースを以前より大きく回っていることも、悪化の兆候とは捉えていなかった。

「ひざを再び痛めず、いい状態に保つために慎重になっている」という見方だった。走る角度もタイムもよく、三塁へ向かってくる表情からも、本人の感覚が戻りつつあるように感じたという。つまり、一塁側ではスピード低下と身体感覚のズレが見え、三塁側からは回復の兆しが見えていた。

 どちらかが間違っていたわけではないのだろう。大谷は回復しながら、同時に100%ではなかったのである。そしてイベルは、ポストシーズンを前に走塁を修正する必要性を問われ、印象的な言葉を残した。

「彼は翔平です。翔平は翔平なんです」

 ミスばかりを考えれば、積極的な走塁はできなくなる。大谷は非常に頭のいい選手で、自分の状態も状況も理解している。だから一塁から三塁へ、二塁から本塁へ、行けると判断したら積極的に走ってほしい。それがイベルの考えだった。

 その後、大谷の身体は思うようには回復しなかった。投手復帰を目指して8月8日に投球プログラムを再開して以降、打撃成績も下降した。

 直近24試合では96打数19安打、打率.198、OPS.690、34三振。9月2日のセントルイス・カージナルス戦では4三振を喫し、最後の打席では右腕を気にする様子を見せた。その後4試合を休み、7日に復帰したものの、状態は再び悪化。最終的に球団はIL入りを決めた。投手としての復帰は来季へ持ち越された。

 もっと早く休ませるべきだったのではないか。当然、そんな疑問が生まれる。地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』も「彼は超自然的な存在ではない」と題した記事で、7月や8月にILに入れず、投球プログラムの開始と中断を繰り返した球団の故障管理に疑問を投げかけた。ロバーツ監督自身も9月になって、現在の状況がわかっていたならもっと早くILに入れたかったという趣旨の発言をしている。

 結果だけを見れば、そう考えるのは簡単だ。だが、本当に判断を間違えたと言いきれるだろうか。

 8月の時点で、イベルには大谷がよくなっているように見えていた。ウッドワードもスピード低下を認識しながら、走る姿を見て「飛ぶように走っている」と驚く瞬間があった。そして何より、大谷自身が打線に残ることを望んだ。9月に入ってから本人も「もちろん完全にプレーしないことが一番の回復方法」と認めている。それでも「今はプレーし、いいプレーをすることに集中したい」と話していた。

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