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父親&31歳となった大谷翔平の変化と成長 ロバーツ監督が指摘する「父親パワー」の根拠とは? (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【「父親になれば強くなる」は大谷に当てはまるのか?】

 ちなみに大谷に4月に長女が誕生し、父親となった時、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「Dad strength(父親パワー)」の信奉者だと明かし、「翔平も父親になったんだから、バットで打球速度が120マイル(192キロ)出るかもね」と冗談交じりに笑っていた。

「父親になると強くなる」という話は、科学的に証明された事実ではなく、どこか都市伝説めいた側面もある。根拠ははっきりしないものの、「父親パワー」はMLBの世界では以前からたびたび語られてきた。

 前述のトラウトも、2020年に父親となり、戦列に復帰した直後の8試合で6本塁打を放っている。「間違いなく本物。関連性はある。人生のなかでも特別な瞬間だし、みんながそのことを話題にするから、自然と意識するようになる」と、本人も最近のインタビューで語っている。

 4児の父で、さらに5人目の誕生を控えているクレイトン・カーショーも、父親になってからのエネルギーの変化についてこう話す。

「なんか常に動いている感じになる。もう"座ろう"って気にもならない。子どもがいなかった頃は、"今日はちょっとゆっくりしたいな"とか思う日もあったけど、今はもうそういうのがないし、必要もない」

 偉大なふたりの経験談ではあるが、それが「父親になれば強くなる」ことの科学的証拠とは言い難いし、あまり大谷には関係のない話かもと思ってしまう。それよりも本当に大きな影響を与えているのは「意識の変化」かもしれない。

 ロバーツ監督は、こうも語った。

「父親になることで視点が変わるんだ。些細なことにこだわらなくなり、本当に大切なものが何かが見えてくる。その変化は野球場でも生きてくる。実際、多くの選手たちが父親になることで、人生観や野球への向き合い方を変えていくのを見てきたよ」

 筆者の印象は、今の大谷が以前にも増してメンタル面で安定していることだ。その日その日の結果に一喜一憂せず、シーズン全体を見据えながら、自分がすべきことに集中している。その背景には、父親になったことに加え、世界一を目指すドジャースで2年目を迎えたということもあるのだろう。

 例えば、7月初旬には厳しい局面が続いた。4日からのヒューストン・アストロズ、ミルウォーキー・ブルワーズとの2カードで連続スイープ(同一カード連敗)を喫し、続く左フランシスコ・ジャイアンツ戦にも敗れて7連敗。打線はそのうちの4試合でわずか1得点と深刻な不振に陥った。

 そんななかでも、大谷は冷静だった。打線不振の要因について問われると、こう語った。

「ここ数日、相手がすばらしい投手を揃えてきているというのはある。そのなかで、僕自身も含めて最低限の仕事ができれば、ヒットがなくても得点できる場面は少なからずある。そういうチャンスをきっちりものにできれば、終盤はしっかりブルペンに託す形に持ち込めるんじゃないかな」

 また、ケガ人が相次ぐ状況についても、前向きに受け止めていた。

「幸いにも、それほど長い離脱にはならない。今出ている選手たちで頑張るしかない。ミギー(ミゲル・ロハス)もそうですけど、しっかり結果を出している選手もいる。オールスターブレークまでの残りの期間を粘り強く戦い抜ければ、主力が戻ってきたときにまたいい戦いができると思います」

 ピンチの時ほど、チームリーダーとしての視野の広さと冷静さが光る。

つづく

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

  • 大谷翔平

    大谷翔平 (おおたに・しょうへい)

    1994年7月5日生まれ。岩手県水沢市(現・奥州市)出身。2012年に"二刀流"選手として話題を集め、北海道日本ハムからドラフト1位指名を受けて入団。2年目の14年にNPB史上初の2桁勝利&2桁本塁打を達成。翌年には最多勝利、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠を獲得。

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