「マスターズ最終日の松山英樹を見てイチローを思い出した」。元マーリンズ球団社長が感動した日本人スーパースターの「風格」

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Kyodo News

 昨年、松山英樹が日本人で初めてマスターズを制したニュースは、アメリカ各地でも大きな話題になった。全米中継された最終日は、約100万人が視聴したという。これは一昨年にロサンゼルス・ドジャースがワールドシリーズを制した6連戦の平均視聴者数とほぼ同じだったそうだ。

 そんな松山の偉業に、特別な思いをよせたひとりの野球関係者がいた。

2016年2月にイチロー(写真左)のキャンプ地を訪れた松山英樹2016年2月にイチロー(写真左)のキャンプ地を訪れた松山英樹この記事に関連する写真を見る

イチローと松山のマインド

「世界的な大会を制覇したことで、イチローのように松山英樹が"ヒデキ"として多くの人に知られるようになったことでしょう」

 そう語ったのは、イチローが2015年から3年間プレーしたマイアミ・マーリンズで、球団社長(当時)を務めていたデビッド・サムソンだ。サムソンは18年間、野球界で活躍したが、2017年のシーズン終了後にオーナーが変わったため、イチローとともにマーリンズを退団。現在はスポーツコメンテーターとして活躍している。

 サムソンがふたりを引き合いに出したのは、成し遂げた偉業を比較したいからではない。松山のマスターズ制覇の際、マーリンズ時代に見てきたイチローの行動を思い出したからだった。

「マスターズ最終日に松山が感じたプレッシャーは、ただ優勝するためだけではなかったはずです。日本中の期待を一身に背負ってプレーしていたと思います。それはイチローを見ている時にも感じていたことです。マーリンズ時代、イチローはメジャー通算3000安打など、いろいろな記録を達成しました。とくに印象に残っているのは、そうした国民からの期待を冷静に受け止め、目標を達成するために黙々と準備していたことです」

 マーリンズは日本人選手の獲得に積極的ではなく、2015年のイチローが初めてだった。それまで日本の文化やしきたりを知らなかったサムソンは、イチローの試合への準備や日々の振る舞いを通じて、それらのことを理解するようになった。

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