伝説のノーヒッターの夜。ロイ・ハラデイは白い炎となって燃えていた (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 振り返ってみれば、この試合がハラデイのキャリアで最大のハイライトになった。
 
「この時期のために僕はフィラデルフィアに来たんだ。ここまでも最高の年だったけど、まだやらなければいけないことは残っている」

 快挙を達成した後にそう語ったエースだったが、その「やらなければいけないこと」が果たされることはなかった。ワールドシリーズ制覇の大本命と目されたこの年、フィリーズはナ・リーグ優勝決定シリーズで敗退。以降も世界一には届かず、プレーオフでは通算わずか3勝のみに終わった。

 ポストシーズンでのノーヒット・ノーランはとてつもない偉業だが、ハラデイの実力を考えると、あのレッズ戦以上にスポットライトを浴びることがなかったのは残念だった。当時、現役最高の実力者でありながら、ワールドシリーズでの登板が叶わなかったのは"悲運"としか言いようがない。そして今週、突然訪れた人生の終幕は、悲劇のストーリー感をさらに強めてしまったように思える。

 ただ......チャンピオンになれず、つらい最期を迎えはしたものの、ハラデイという名投手が忘れられることはない。今後、名誉の殿堂入りを果たすことがあろうとなかろうと、常に準備と努力を怠らなかった右腕に対するリスペクトが薄れることはないだろう。

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