球速低下が指摘される田中将大。問題はそこではない (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu  photo by AFLO

 そこで今、メジャー関係者の間で新たに提唱されつつあるのが、「トミー・ジョン手術を回避したければ、全力投球はするな」ということです。今年3月にダルビッシュ有投手(テキサス・レンジャーズ)を執刀したトミー・ジョン手術の権威、ジェームズ・アンドリュース医師もこのように力説しています。

「常に100パーセントの力で投げてはいけない。ピッチャーの目的は、スピードガンで高い数字を叩き出すことではない。いかに相手に点を与えないかだ。一流ピッチャーは速球のスピード差を広げ、ボールを動かす技術に長(た)けている」

 つまり、常に全力で投げていると、必ずひじを傷めることなると、警鐘を鳴らしているのです。

 また、他の専門家たちもひじを傷めないピッチングについて、「速球の最高時速と平均時速の差が大きいのが望ましい」と語っています。その例として、2013年以降にメジャーで投げた先発ピッチャーのストレートの球速が紹介されていました。アメリカのデータ管理会社『ピッチ・インフォ(Pitch Info)』のデータをもとに、3人のピッチャーを取り上げてみましょう。

 まずは、デトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダー。彼の速球の最速は100.3マイル(約161.3キロ)で、平均が94.2マイル(約151.5キロ)。その差は6.1マイル(約9.8キロ)です。もうひとりは、ヤンキースのCC・サバシア。最速97.4マイル(約156.7キロ)、平均92.0マイル(約148キロ)で、その差は5.4マイル(約8.7キロ)です。そして3人目が、ワシントン・ナショナルズのマックス・シャーザー。彼は最速99.4マイル(約159.9キロ)、平均94.2マイル(約151.5キロ)で、その差は5.2マイル(約8.4キロ)でした。

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