2014.04.06

「間違いなく本物」。敵将が絶賛した田中将大の適応能力

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 米国東部時間4月4日、午後7時53分。ヤンキースの田中将大はトロント・ブルージェイズのリードオフマン、メルキー・カブレラに第1球を投じた。メジャーの歴史にその名を刻んだその記念すべき1球は、外角低めのストライク。93マイル(およそ150キロ)の直球だった。

メジャー初先発、初勝利を挙げた田中将大。

 田中は7回97球を投げ、6安打3失点。8奪三振の上に無四球の好投で勝利投手となった。田中は、伊良部秀輝。吉井理人、石井一久、松坂大輔、黒田博樹、川上憲伸、ダルビッシュ有に続き、日本人投手として9人目となる初登板、初勝利を飾った。試合後、田中は「嬉しいのはもちろんですけど、ホッとしましたね」と、素直な気持ちを明かした。

 メジャー初登板、1億5500万ドル(約161億円)のルーキー・田中には計り知れない数々の重圧がかかっていた。そのプレッシャーとの戦いは、昨季24勝0敗の記録を達成した男でさえ、「マウンドに上がる前では緊張感というのがあって、マウンドに上がってからもゲームに入り切れていない感じがあった」と語ったように、平常心を保つのは容易なことではなかった。

 その結果が、2回までの3失点だ。ホームランを含む許した4安打は、すべて失投であり、スプリットもスライダーもいつもの軌道とは違い、キレも欠いた。

 序盤の不安定な投球は精神面から来るだけのものではなかった。田中は傾斜との戦いも強いられていたのだ。ブルージェイズの本拠地、ロジャース・センターのマウンドはメジャーの球場の中でも傾斜がきついことで知られている。黒田はその傾斜を嫌い、「投げにくい。あまり好きなマウンドではない」と言う。

 田中も、明らかに序盤は黒田と同じような感覚を受けたのだろう。傾斜負けをし、ステイバックが効かずに体が本塁方向に流れるため、トップが作りきれずに横ぶりの投球フォームになってしまっていた。