日本人メジャーリーガーたちの「2013年名場面」ベスト10 (4ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

3位 開幕早々に披露したダルビッシュ有の真骨頂

 4月2日、開幕2試合目のヒューストン・アストロズ戦で、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手がとんでもないピッチングを見せてくれました。シーズン初先発で注目の集まる中、いきなり完全試合を達成しそうな快投を演じたのです。

 序盤からアストロズ打線を封じたダルビッシュ投手は、9回ツーアウトまで誰にも一塁すら踏ませませんでした。あとひとり抑えれば、メジャー史上24人目となる完全試合の達成です。スタジアムに詰め掛けた観客だけでなく、テレビで見ている日本のファンも固唾(かたず)を飲んで見守りました。しかし、27人目の打者のマーウィン・ゴンザレスにセンター前ヒットを打たれ、万事休す。日本人メジャーリーガー初の快挙はなりませんでした。

 過去の日本人投手では、野茂英雄投手がノーヒットノーランを2度達成しているものの、完全試合は誰も成し遂げていません。ただ、完全試合を逃したとはいえ、ダルビッシュ投手の2013年を代表する試合と言っていいでしょう。この試合で自己最多の14奪三振をマークしたダルビッシュ投手は、その後も三振の山を築き、見事、奪三振王のタイトルを獲得したのです。

2位 世界一の瞬間をマウンドで味わった守護神・上原浩治

 2013年を総括するうえで、上原浩治投手の活躍を取り上げないわけにはいきません。特にポストシーズンのピッチングは、語り継がれるべき内容だったと思います。ポストシーズンの成績は、13試合に登板して1勝1敗・防御率0.66。7回のセーブ機会をすべて成功させ、レッドソックスを頂点に導きました。

 ワールドシリーズ最終戦でクローザーとしてマウンドに立ち、ゲームの最後を締めくくったのは、もちろん日本人初の快挙です。100年以上の歴史を誇る栄光のワールドシリーズの舞台で、上原投手が歓喜の輪の中心となっていたシーンは、メジャーリーグファンの記憶にずっと刻まれ続けることでしょう。

 過去、ポストシーズンでこれほど圧倒的なピッチングを見せたクローザーは、デニス・エカーズリー(1975年~1998年/オークランド・アスレチックスなど)と、マリアノ・リベラ(1995年~2013年/ニューヨーク・ヤンキース)くらいではないでしょうか。そんな偉大な守護神と並び称されるほど、上原投手の投球内容は素晴らしかったと思います。

1位 イチロー、日米通算4000本安打達成

 最後に取り上げるのは、やはりこの偉業しかないと思いました。8月21日、ヤンキースのイチロー選手が本拠地ヤンキースタジアムで、日米通算4000本安打を達成した出来事です。これまで4000本安打を記録したプロ野球選手は、4191本のタイ・カッブ(1905年~1928年/デトロイト・タイガースなど)と、4256本のピート・ローズ(1963年~1986年/シンシナティ・レッズなど)のふたりしかいませんでした。そんな至高の領域に、イチロー選手の名が刻まれたのです。日米通算記録とはいっても、今後、このような偉業は二度と生まれてこないでしょう。

 しかも、イチロー選手がヤンキースの一員として達成したことに、さらなる価値があると思います。メジャーにおいて、ヤンキースというチームは別格の存在です。ピンストライプのユニフォームで金字塔を打ち立てたことが、メジャー史の中でも重要な意味を持つのです。ヤンキースタジアムで喝采を浴びたイチロー選手の姿を忘れることはないでしょう。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る