日本人メジャーリーガーたちの「2013年名場面」ベスト10 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

6位 三冠王カブレラと名勝負を演じた田澤純一

 2013年、レッドソックスで中継ぎを務めた田澤純一選手は、もっと賞賛されるべきでしょう。レギュラーシーズンで上原浩治投手にバトンタッチする仕事ぶりも素晴らしかったですが、なによりポストシーズンでのピッチングが圧巻でした。特にすごかったのが、リーグチャンピオンシップでのデトロイト・タイガース戦。2012年の三冠王、ミゲル・カブレラと勝負したシーンです。

 まずは第3戦、8回ワンアウトでランナー1、3塁の場面。カブレラと対戦した田澤投手は、すべてストレートを投じて空振り三振に切って取りました。続いて第5戦、7回ノーアウト1、3塁の場面では、カブレラをセカンドゴロに仕留めて、またもピンチから脱出。そして第6戦、7回ツーアウトの場面でも、田澤投手はカブレラをショートゴロに抑え、チームを勝利に導いたのです。

 最も賞賛されるべきは、カブレラに対してすべてストレートで勝負したところでしょう。まさに、「パワー対パワー」の勝負に勝ったのです。田澤投手がいなければ、レッドソックスの世界一はなかったと思います。それほど、田澤投手はプレイオフの重要な局面で何度もチームを救いました。

5位 「キング」と並ぶエースとなった岩隈久志

 今シーズンの日本人最多となる14勝、リーグ3位の防御率2.66、同じくリーグ3位の投球回数219イニング3分の2、WHIP(※)1.01、そして勝率7割超え……。2013年の岩隈久志投手(シアトル・マリナーズ)の特筆すべき成績を挙げればキリがありません。

(※)WHIPとは、被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数値で、1イニングあたり何人の走者を出したかを表わす。WHIP1.00未満なら球界を代表する投手と言われている。

 ただ、その中でも一番注目すべき数字は、球数の少なさでしょう。1イニング14.12球、200イニング以上投げての1シーズン3102球は、メジャー全体の中でも断トツ1位です。球数制限の厳しいメジャーにおいて、岩隈投手ほど安定感のあるピッチャーはいません。長いシーズンを戦うためにローテーションで頭を悩ます監督にとって、最も欲しいピッチャーだと思います。

 ア・リーグのサイ・ヤング賞投票で3位にランクインしましたが、それは当然の結果でしょう。チームメイトで、2010年のサイ・ヤング賞に輝いた「キング」ことフェリックス・ヘルナンデス(12勝10敗・防御率3.04)より上位に選ばれたことでも、そのすごさは分かると思います。2014年も、岩隈投手はヘルナンデスとともにマリナーズの2枚看板として大いに活躍してくれることでしょう。

4位 成績だけでは語りきれない黒田博樹の存在感

 2013年のヤンキースは、非常に苦しい1年となりました。ポストシーズンに進むことができず、早々にシーズンを終了。そんな苦境の中、孤軍奮闘していたのが黒田博樹投手です。黒田投手は4年連続でふたケタ勝利をマークし、3年連続で200イニングも達成しました。あまり大きく報じられていませんが、4年連続ふたケタ勝利は日本人メジャーリーガー初の快挙です。

 2012年は防御率3.32で16勝11敗、一方、2013年は防御率3.31で11勝13敗。防御率はほとんど変わらないのに、黒田投手は勝ち星に恵まれませんでした。それはひとえに、ヤンキースが過去に例のないほどの貧打に苦しんだからです。本来のようなヤンキース打線なら、15勝はしていたと思います。

 それでも結果を残しているのが、黒田投手のすごさです。全米で最もプレッシャーのかかる名門ヤンキースで、いつも動じずに好投を続けているのですから。今オフ、ヤンキースが必死になって引き止め交渉を行ない、今季の年俸を上回る1600万ドル(約16億4800万円)で再契約したのも分かります。来年2月で39歳になりますが、変わらず活躍してくれることでしょう。

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