最下位から世界一へ。上原浩治はチームに何をもたらしたのか

  • カルロス山崎●文 text by Carlos Yamazaki
  • photo by Getty Images

 レッドソックスの3勝2敗で場所を再びフェンウェイパークに移して行なわれたワールドシリーズ第6戦。4回を終えてレッドソックスが6-0とカージナルスを突き放すと、その頃から外野スタンドのファンは立ちっぱなし。そして試合が終盤にさしかかると、ロックフェスティバルのようにスタジアムの観客はほぼオールスタンディング状態となった。

5点リードの9回、4番手でマウンドに上がった上原浩治はカージナルス打線を三者凡退に抑え、悲願のワールドシリーズ制覇を成し遂げた5点リードの9回、4番手でマウンドに上がった上原浩治はカージナルス打線を三者凡退に抑え、悲願のワールドシリーズ制覇を成し遂げた

 だが不思議なことに、世界一を決する戦いであるにも関わらず、普段は大合唱となる『Let's go Red Sox』のコールはそれほど起こらなかった。試合の流れが完全にレッドソックスに傾いていたこともあるだろうが、もうひとつ理由があった。5点リードで迎えた最終回、上原浩治がマウンドに上がるとファンは『Let's go Red Sox』ではなく、今季お馴染みとなった『Koji, Koji』の大合唱で完全に一体化した。ファンは知っていた。1年前はア・リーグ東地区最下位に終わったチームを一転させた救世主を崇拝するかのように、上原の名前を連呼したのだ。

 プレイオフ通算13試合目の登板だった。レギュラーシーズンを合わせると86試合目。38歳の上原はプレイオフに入ってから、「しんどいです」「疲れています」などと、自身の状態について素直に語ってきたが、どんな時も腕をしっかりと振り続けてきたように、この日も最後はスプリットで空振り三振を奪って試合を締めくくった。

 報道陣に対して開口一番、「あー、長かったですね。やっと休めます」と話した上原。「今は脱力感しかない。早く休みたいです。今年は1年頑張ったと自分で言えると思います」とも語った。

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