【MLB】松井秀喜にさらなる試練。メジャーのトレンドとなる『DHローテ制』 (2ページ目)

  • 水次祥子●文 text by Mizutsugi Shoko
  • photo by Getty Images

 また、今季のツインズはジャスティン・モウノーとジョー・マウアーという、ふたりの看板選手がDHを使っている。モウノーは一昨年から続く脳震とうの後遺症があり、マウアーも故障が続いているためだ。84~85年に西武と横浜でプレイし、現在ツインズの一塁コーチを務めるジェリー・ホワイトは次のように説明する。

「本来、彼らはDHタイプの選手ではない。バッティングはいいけど守れないのがDHタイプの選手だが、ふたりとも守備力はすぐれているからね。でも、彼らの体調を維持するためにDHで出場させているんだ。いわば"半休"みたいなものだね」

 さらにDHのローテーション制は、コストパフォーマンスという点でもすぐれているというのが、現在の米球界の認識だ。昨シーズン、ア・リーグ14球団におけるDHのOPS(出塁率と長打率を合計した打撃の指標)のワースト5を見てみると、悪い順からマリナーズ、アスレチックス、エンゼルス、オリオールズ、レイズだった。このうち3球団は言うまでもなく、松井、ゲレーロ、デイモンが所属していたチームだった。どの球団も、わざわざDHタイプの選手を獲らなくても、主力選手や控え選手をうまく回して起用したほうが得だと考えるようになったというのだ。

 こうしたDH事情の中、松井もデイモンも厳しい立場での挑戦を選んだ。松井が契約を決める前、ある球団の関係者は「松井がメジャーにこだわらず、マイナーでも契約したいというのなら契約することはできるだろう。だが、実績のあるベテラン選手にこちらからマイナー契約をオファーするのは失礼。とにかく彼自身の意志が大事で、我々は、彼がどうしたいのかわからない」と話していた。

 松井は悩み続けていたに違いない。そしてついに決断したのだろう。契約が決まらないまま開幕した時は、多くの人が心配していた。同い年のヤンキース黒田博樹は、「同級生ですし、たくさん対戦したバッターなのですごく気になっている」と語り、巨人時代の同僚、エンゼルスの高橋尚成は、「また決まっていないわけだし、さすがに連絡できない」と気を遣っていた。マイナーとはいえ、レイズとの契約のニュースにみんなが安堵した。

 しかし、これからの松井にはさらに厳しい現実が待ち受けている。この逆境に打ち勝ち、再びメジャーの舞台に上がる日は来るのか。アメリカに渡って10年目、松井の戦いを見守りたい。

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