【ドラフト2026】奥川恭伸と並ぶ逸材だった「紀州の剛腕」の今 3年間の空白を乗り越え、25歳で最速157キロの衝撃 (4ページ目)
【遠回りしたからこそ見つけたもの】
10月22日にドラフト会議を迎える。今年も指名がなかった場合は、どうするのか。そう尋ねると、落合は「やっぱり年齢を考えたら、いろいろと焦るところもあって......」と狼狽を隠さなかった。そして、自分に言い聞かせるように、こう答えた。
「とりあえず、今はそういうことを考えんと、最後まであがこうかなと思ってます」
同学年の佐々木朗希は今や海を渡り、ドジャースのユニホームを着て戦っている。てっきり無関心なのかと思ったら、落合は「動画をめっちゃ見ます」と語った。
「どうやって球速を上げられるんやろと思って、動画をスローにして見ています。やっぱりトップレベルなんで、気になりますよ」
そこには「ライバル」という心情も介在するのだろうか。そう尋ねると、落合は「いやいや、おこがましいですよ」と必死に否定した。
かつては内面的な幼さを抱えていた落合も、20代半ばになった。自分の人生をどのようにとらえているのか聞くと、落合はこんな実感を口にした。
「もっと早くに気づいて、野球から離れやんと(離れないで)やっておけば......とめっちゃ思います。正直、人生をやり直したいですもん。でも、離れていた期間があるから、今があるのかなと思います。今は働いている時よりお金がないですけど、充実感は今のほうがあります」
そして、落合は家族や友人に対して「大切な人が応援してくれたから、野球を続けられています。感謝の気持ちでいっぱいです」と述べた。落合へのインタビューは、それで終わるはずだった。
しばらく時間が経ったあと、落合が私の元に戻ってきた。「すみません、さっき言い忘れたことがあって」と告げ、こう続けた。
「家族や友人だけじゃなくて、環境を与えてくれる人やチームを支えてくれる人、みんなに感謝しています。ここまでいろんなところを転々としてきましたけど、その場所、その場所でいろんな人と出会えて、いっぱい吸収できることがありました。そのことを言っておきたいなと思って」
わざわざそのことを伝えるために戻ってきたのか。私がそう聞くと、落合はバツが悪そうに笑った。落合秀市という人間の心根を垣間見たような気がした。
かつて糸の切れたタコのように無軌道だった落合の姿はもうない。さまざまな人間の支えを追い風にして、落合は高く、高く、舞い上がろうとしている。
落合秀市(おちあい・しゅういち)/2001年7月10日生まれ、和歌山県出身。和歌山東高時代に最速148キロをマークし、「紀州の剛腕」として注目を集める。同世代の奥川恭伸らと並ぶ逸材と評価されたが、2019年のドラフト会議では指名されず。高校卒業後もプロ入りを目指して野球を続け、独立リーグなどで腕を磨く。2026年には最速157キロを記録。ハヤテベンチャーズ静岡に所属し、NPB入りを目指して挑戦を続けている
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