【特別対談】名将・森士×漫画家・二宮裕次「中学ですごかった子」が高校で伸び悩むのはなぜか (3ページ目)
2013年春のセンバツで浦和学院を優勝に導いた森士氏 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る二宮 指導者の感性がエビデンスによって裏づけられるのは心強いですね。最近は高校野球にもアナリストがいてデータと感性をどう両立させるかという問題もありますが、そこはどうお考えですか。
森 それも永遠のテーマで、ピッチャーに「まだ行けるか」と聞くと「行けます」という子と「無理です」という子がいます。指導者としての経験と勘から「行ける」と判断しても「痛い」と言われたら無理はさせられません。ただ高校生って、3年の夏まで2年4カ月しかないんです。そのなかで壊さずに成果をあげるには、無理せずに無理させなきゃいけない......。
二宮 指導者のジレンマですね。石浜は無理して投げたがるタイプなので、痛いとは言わないかな。
森 その痛みも、医学的に壊れてしまう痛みなのか、成長を伴う筋肉の張りによるものなのか。投げたがる子は指導者が止めなきゃいけないし、球数制限や連投禁止の野球に慣れている子は「投げられない」とすぐに言ってくる。だからと言って休んでいたら、高校野球は終わってしまいます。これからはエビデンスを示せるドクターやトレーナーの存在もチームには欠かせなくなると思います。
【中学と高校の間にある空白の7カ月】
二宮 高校で野球を続ける1年生が最初にぶつかる壁は何ですか。
森 中学3年生の中には最後の大会が6月で終わってしまう子もいます。勝ち進めば夏までやれるんですが、それでも8月まで。そこは硬式も軟式も同じです。
二宮 そうなると、4月の高校入学までに7カ月もありますね。
森 試合にも出ない、チームとしての目標もない7カ月というのは伸び盛りの子には長すぎます。試合勘は衰えるし、身体も鈍ってしまう......そんな状態で高校へ入ればいきなり周りのレベルが高いなかでのヨーイドンになりますから、ケガのリスクも高くなります。だから中学から高校への移行期間にどんな準備をするのかが大切です。
二宮 森さんが今、NPOのスポーツクラブで取り組んでいるのはそういうところなんですね。
森 成長のために必要なのは3カ月とも言われています。7カ月ということはそのチャンスが2度あるわけで、そこで休むか準備をするかは大きな違いがあります。私は監督を退いて4年になりますが、7カ月、しっかり準備をした中学生が高校に入ってから明らかに違うことを今、実感しています。
森士(もり・おさむ)/1964年6月23日生まれ。埼玉県浦和市出身。高校時代、県立上尾高校では一度もベンチ入り叶わずも、名将・野本監督に見出され指導者の道へ進む。恩師亡きあと、浦和学院で指導者に。1991年から監督に就任、2021年夏に退任。甲子園には春夏通算22度出場、通算28勝21敗(2013年春優勝)。現在はNPO法人ファイヤーレッズメディカルスポーツクラブ理事長。
二宮裕次(にのみや・ゆうじ)/1981年10月26日生まれ。愛知県東浦町出身。2013年、週刊少年マガジンにて「LAST MAN」で連載デビュー。「BUNGO−ブンゴ−」は週刊ヤングジャンプにて2015年3号から2025年4&5合併号まで連載され、現在の高校生編となる「BUNGO−unreal−」を2025年45号から大好評連載中。待望のコミックス3巻は9月17日発売!
二宮裕次
最新第3巻 9月17日発売!
「甲子園5季連続優勝」という究極の目標を掲げる石浜文吾と野田幸雄。二人は春季大会のベンチ入りを懸けて紅白戦へ臨む。試合も終盤、ブンゴがついにマウンドへ…‼︎ 中学時代を彷彿とさせる剛腕を魅せてくれるのか…⁉︎
“甲子園5季連続優勝”という前人未到の目標を掲げるブンゴと野田。その座を共に目指す桜花の仲間たち、そして行く手を阻む全国の強敵たち。
かつての仲間も、宿敵も、すべてが甲子園への道で交わる──。高校野球編、激闘を織りなす猛者たちの現在地をここに!!
著者プロフィール
石田雄太 (いしだゆうた)
1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。
フォトギャラリーを見る
3 / 3







