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【社会人野球】広島戦力外の元ドラ4が「異例の正社員」に プロ通算10安打で終わった男が新天地で取り戻した輝き (3ページ目)

  • 高木遊●文 text by Yu Takagi

【元プロが見せた献身性】

 激戦が続いた都市対抗予選では、その言葉を象徴するような場面があった。セガサミーとの初戦。韮澤は4回、逆方向の左翼席へ本塁打を放った。しかし、4対0で迎えた7回、二塁手として一塁へ悪送球。これをきっかけに一挙7点を奪われ、9回には代打を送られた。

 下を向いてもおかしくない。「元プロ」としてのプライドが傷ついても不思議ではない状況だった。それでも、9回に味方が3点を奪って同点に追いつき、試合が延長にもつれ込むと、10回の攻撃を前に行なわれたグラウンド整備で、率先してトンボを手にする韮澤の姿があった。

 社会人野球では当たり前の光景なのかもしれない。だが、昨年まで身を置いていたプロ野球では、選手自身が担うことのない仕事だ。その話を北道監督にすると、目を細めた。

「試合に出ていない時は、バット引きもやってくれますよ」

 高校時代、誰よりも早くグラウンドに来て整備を始めていた少年。その身に染みついたものは、「厳しい世界でした」と振り返る6年間のプロ生活を経ても、何ひとつ変わっていなかった。

 セガサミーとの初戦では、一発勝負の緊張感のなかで、個人として悔しい思いも味わった。それでも、第4代表決定戦では3打数2安打2打点。チームを2年ぶり48回目の都市対抗本大会出場へと導いた。

 8月28日、NTT東日本は日本製紙石巻との都市対抗初戦を迎える。

 舞台は東京ドーム。会社を挙げた大応援団の声援を受け、韮澤にとっては久しぶりに大観衆の前でプレーする機会となる。

「活躍している姿を6年間見せられませんでした。とくに最後の1年はケガをして、いろんな病院の先生などにお世話になったので、活躍する姿を見せて恩返ししたいです。そして、会社にしっかり貢献できるように頑張りたいです」

 もう、その言葉は社会人野球の選手そのものだった。

 勝つために、自分にできることをする。打てなくても、試合に出られなくても、チームのために動く。一発勝負の緊張感と、ひたむきな姿勢が見る者の胸を打つ社会人野球。その舞台で韮澤は、プロの世界で磨いた技術と、昔から変わらない献身性を武器に、再び輝こうとしている。


韮澤雄也(にらさわ・ゆうや)/2001年5月20日生まれ、新潟県出身。右投左打の内野手。花咲徳栄高では1年時からベンチ入りし、2017年夏の甲子園で全国制覇を経験。3年連続で夏の甲子園に出場し、2019年にはU-18日本代表に選出された。同年のドラフトで広島から4位指名を受けて入団。一軍通算63試合に出場し、75打数10安打、打率.133、3打点。2025年に戦力外通告を受け、2026年からNTT東日本でプレーしている。

著者プロフィール

  • 高木 遊

    高木 遊 (たかぎ・ゆう)

    1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。

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