【高校野球】前田悠伍の再来か!? 聖隷クリストファーの2年生左腕・髙部陸が圧巻の投球で悲願の甲子園まであと1勝 (3ページ目)
この日、内野ゴロを打たせるのに効果的だったのは、チェンジアップだった。人差し指と親指で輪をつくった状態でボールを握り、抜くように投げる。髙部は春以降、このボールを重点的に練習してきた。
「今まで抜く系のボールが投げられなかったんです。最初はフォーク系で速くて落ちる球を投げていたんですけど、それを改良して抜く系のボールが投げられるようになりました。相手に『ストレートしかない』と思われるのではなく、いろんな球種を使って簡単に打ち取ることをテーマにしてきました」
超高校級の切れ味を誇るストレート。さらに130キロ台で鋭く横滑りするカットボールに、チェンジアップまでマスターした。髙部は2年生にして、難攻不落の域に近づきつつある。
近い将来、投手としてどんな「完成形」を思い描いているのか。そう尋ねると、髙部はこう答えた。
「上村先生からは『工夫して投げることが大事だ』と言われてきたので、ただ力で押すピッチングではなく、頭を使ってバッターを打ち取っていくピッチャーになっていきたいです」
埼玉県出身の髙部は、上村監督の指導を受けるため、静岡県の聖隷クリストファーに進学している。静岡の高校野球ファンにとっては、髙部という大器の成長を間近で見られることは僥倖(ぎょうこう)だったに違いない。
聖隷クリストファーは28日に名門・静岡と静岡大会決勝を戦う。2022年秋の東海大会で準優勝しながら、翌春のセンバツで選考漏れした悲劇から3年。聖隷クリストファーは強力な2年生エースを擁して、初の甲子園出場を手繰り寄せようとしている。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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